Category Archives: 3. 肝臓の病気

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは、飲酒や運動不足が原因ではないのにALT(GPT)が高値のまま続き、ジワジワと肝臓の線維化が進行して肝硬変、肝ガンにまで進んでしまう病気です。病気として認識され始めたのが1998年とごく最近のことで、これまでの脂肪肝に比べて認知度も高くない上に、症状がほとんどなく脂肪肝との区別も簡単ではないので、ただしく判断されないケースが少なくないことも考えられます。

酒を飲まない人は脂肪肝にならない、仮になっても悪化しないというのがかつての常識でしたが、このNASHの場合は放置すると最終的には肝ガンにまで進行してしまいます。NASHの特徴としては飲酒歴のない脂肪肝で、ALT(GPT)が持続的に高く、特に正常値から4倍を超えている場合に可能性が疑われます。欧米ではNASH症例の約30%が10年間で肝硬変に進行したとの報告もあります。まだまだ未解明な病気ですが、ALT(GPT)の高値を抑えることで症状が改善されたとの報告も増えてきています。

このNASHは女性と比べて男性に多く、特に内臓脂肪型肥満(いわゆるメタボ)の人が合併して発症していることが分かっています。そのため、メタボ対策と併せて考えていかなければいけない病気とも言えるでしょう。定期健診の際に可能性を疑われたら必ず精密な検査を受けることをお勧めします。

若年層でウイルス性肝炎に感染する患者数が急速に減っている状況や、すでに保有・発症している患者も年々高齢化していくことを踏まえると、今後ウイルス性肝炎が減少していくのは自然の流れであり、アルコール性肝炎以外では、将来的には脂肪肝やこのNASHを原因とする肝硬変や肝臓がんが大きなウエイトを占めるようになっていくものと考えられています。

薬害肝炎(非加熱製剤)

旧ミドリ十字(現在の田辺三菱製薬、ウルソの製造元)が製造販売していた非加熱製剤の投与によるC型肝炎感染が大きな問題になり、いまでもその薬害に苦しんでいる方々が多くいます。事件の経緯や、裁判の経過などはここでは触れませんが、被告の田辺三菱製薬によるとこの製剤の推定投与数は約29万人で、その結果肝炎に感染した方は1万人を超えるとの見方を示しています。 Read more »

C型肝炎

C型肝炎に感染すると、発熱や倦怠感、食欲不振、嘔吐といった症状が現れます。血液検査ではAST(GOT)ALT(GPT)がぐっと高くなり、急性肝炎を引き起こすことが多いです。このうち約60~80%の方がALT(GPT)が高いまま、肝炎が慢性化すると見られています。このあと放置してしまうと、感染から20年で約6割の方が肝硬変、さらに進んでしまうと25年で肝臓ガンに移行すると見積もられています。 Read more »

B型肝炎

B型肝炎は、感染しても多くの場合は無症状のままですが、約20~30%の人が急性肝炎を発症し、ごくまれに劇症肝炎化します。日本ではB型肝炎ウイルス保持者は、150万人程度といわれています。そのうち約1割が肝炎を発症して慢性肝炎に進行しています。成人の場合、初感染の多くは免疫のちからでウイルスを排除して一過性の感染で済むことが多いのですが、成人のキャリア化も増えているそうです。 Read more »

鉄・銅代謝異常

肝臓では、鉄や銅を適切な量だけ貯蔵する働きがあります。しかしながら、慢性肝炎になると進行とともに蓄積する鉄や銅の量が増えていく代謝異常が起こり、肝障害の度合いを強めてしまうことが多々あります。 Read more »

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、自己免疫反応に関係した肝障害とされています。肝炎ウイルス感染や薬物などによらない免疫異常が肝炎を引き起こしていると考えられていますが、原因はまだはっきりしていません。本来自分の身を守るはずの免疫が、肝臓の細胞を攻撃するようになることで炎症を引き起こしています。どうしたら自己免疫性肝炎にかかるのかも分かっていません。 Read more »

薬物性肝障害

薬の代謝は肝臓で行なわれることが多く、さまざまな代謝産物が肝臓に出現するため、副作用として肝機能障害が多いと考えられています。

代表的なものとしては、解熱消炎鎮痛薬、抗真菌薬(水虫や真菌症の飲み薬)、漢方薬などでみられます。市販の解熱消炎鎮痛薬、総合感冒薬(かぜ薬)のような医薬品でみられることもあります。また、単独では肝障害を引き起こさなくても、複数の薬を一緒に飲むと肝障害が出る場合があります。

副作用の出かたには次のようなパターンがあります。

  1. たくさん飲んではじめて副作用が出る場合
    これを中毒性肝障害といい、例えばかぜ薬にもよく使われているアセトアミノフェンという解熱消炎鎮痛薬はどんな人でもたくさん(規定量の10~20 倍以上を一度に)飲めば肝機能障害が出ます。決められた用法・用量を守ることが重要です。
  2. 飲んだ量に関係なく副作用が出る場合
    ほかの人では、服用しても何も問題ない薬でも、ある人では少量でもかゆみ、発疹、じんま疹、肝機能障害などが出るパターンの肝障害です。この場合、副作用が出るかどうか事前に予測することは難しいのですが、ほかの薬でアレルギーが出たとか、もともと喘息やじんま疹などいわゆるアレルギー体質の方に出やすい傾向があります。服用をはじめてから数時間といった早い時期の発疹で始まるなど、反応が急速な場合もあります。
  3. ある特定の人にしか副作用が出ない場合
    薬を代謝する酵素や、薬に対する免疫に個人差がある場合に出る肝障害です。お酒の強さに個人差があるように、薬の代謝、分解にも個人差があることが分ってきました。薬によっては6 ヶ月以上(なかには2 年以上)服用を続けた後に肝機能障害が出ることもあります。薬の副作用によって肝障害が生じた場合、気づかずに長期使用すると重症化する場合があるため、注意が必要です。

「倦怠感」、「発熱」、「黄疸」、「発疹」、「吐き気・おう吐」、「かゆみ」などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりするような場合であって、医薬品を服用している場合には、放置せずに医師、薬剤師に連絡をしてください。

受診する際には、服用したお薬の種類、服用からどのくらいたっているのか、症状の種類、程度などを医師に知らせてください。早期の対応策として
は、その薬を飲まないことですが、勝手に中止すると危険な薬もありますので、医師に相談して下さい。

【主な症状と具体的な身体所見】

  • 全身症状:倦怠感、発熱、黄疸など
  • 消化器症状:食欲不振、吐き気、おう吐、腹痛など
  • 皮膚症状:発疹、じんましん、かゆみなど

また、症状として現れませんが、血液検査で発見される場合もあります。

脂肪肝/脂肪性肝炎

脂肪肝

脂肪肝 (右下は正常な肝臓の色)

脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積した状態で、検診で引っかかる肝機能異常の大半はこれだと言われています。脂肪肝という名の独立した疾病ではありませんが、多くの原因から引き起こされる肝臓の脂肪変性とされています。ちなみに、フランス料理で有名なフォアグラは、人工的に脂肪肝を造ったものです。 Read more »

アルコール性肝炎

アルコールの飲みすぎにより肝臓病がおこります。始めは脂肪肝から始まることも多く、飲みすぎれば誰にでも起こります。飲み続けているとアルコール性肝炎という病気になり、死亡することもあり得ます。さらに飲み続けると肝硬変という最終段階に入ります。ここまで来ると治るのが大変です。そうならないような飲み方、またアルコール性肝臓病の早期発見が大切です。 Read more »

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスに感染して、肝臓の細胞が壊れていく病気です。本来肝臓は再生能力が高く、例えば手術でその半分以上を切り取っても元の大きさまで再生できるほど丈夫な臓器ですが、この病気になると徐々に肝臓の機能が失われていき、ついには肝硬変などといった、再生すらも不可能な病気に進行してしまいます。 Read more »