垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用

垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用

張岫美、王菊英、婁海燕、劉慧青
山東大学医学院薬理学研究所 山東省済南市文化西路44号 250012

【摘要】

当実験では垂盆草エキスのCCL4(四塩化炭素)起因によるマウス急性肝損傷に対する保護作用を研究した。結果は、垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス急性肝損傷に対して保護作用があり、血清ALT、ASTレベルを低下させた。また病理組織学研究においても顕著な改善作用があったことが証明された。

【薬品及び試薬】

  1. 垂盆草エキス:山東省生物薬物研究院の提供による。成人に対して毎日3.6gずつ服用するものとする。ロット番号:200208008
  2. 四塩化炭素(CCL4):天津市北方化玻購銷センターの生産による。ロット番号:20020408
  3. Bifendate Pills:中国医学科学院薬物研究所の提供による。ロット番号:20011228
  4. レバミゾール:山東省莒南製薬工場の生産による。ロット番号:051102
  5. リン酸デキサメタゾンナトリウム注射液:済南永寧製薬工場の生産による。ロット番号:0204161
  6. ALT検査薬箱:南京建成生物工程研究所の生産による。ロット番号:20021112
  7. AST検査薬箱:南京建成生物工程研究所の生産による。ロット番号:20021113
  8. カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na):上海儀器試薬公司の提供による。ロット番号:20020306

【実験機器】

UV-2102 PCS型紫外可視分光光度計:竜尼柯(上海)儀器有限公司

【実験動物】

昆明種マウス、20-23g、雌雄半数ずつである。山東大学実験動物センターの提供による。実験動物質量合格証号:魯動質字20021023

【実験方法と結果】

(一)薬物配合と動物グループ分け

  1. 正常対照グループ:蒸留水0.2ml/10g服用。
  2. 肝損傷対照グループ:蒸留水0.2ml/10g服用。
  3. 垂盆草エキス低薬剤量:156ml/kg、蒸留水を使用して濃度0.78%になるよう調整する。0.2ml/10g服用。
  4. 垂盆草エキス中薬剤量:468ml/kg、蒸留水を使用して濃度2.34%になるよう調整する。0.2ml/10g服用。
  5. 垂盆草エキス高薬剤量:1404ml/kg、蒸留水を使用して濃度7.02%になるよう調整する。0.2ml/10g服用。
  6. Bifendate Pills:40mg/kg、0.5%CMCで濃度0.2%になるよう調整する。0.2ml/10g服用。

 (二)肝損傷マウスの血清ALT、ASTに対する影響

昆明種マウス72匹をランダムに6つのグループに分ける(それぞれ正常対照グループ、肝損傷グループ、Bifendate Pills 40mg/kgグループ、垂盆草エキス1404mg/kg、468mg/kg、156mg/kgグループ)。0.2ml/10gずつ毎日1回服用し、連続15日間続ける。また第14日目に服用してから1時間経過後に、正常対照グループ以外にCCL4油溶液(0.3%)を10ml/kg皮下注射する。さらに投薬から20時間経過後に眼球を摘出して採血しALT、AST値を測定する。各グループ測定値は概ねX±Sで表示し、統計学処理にt検査を採用する。

 (三)肝臓病理学研究:一部の肝臓を摘出して病理組織学検査を行う。

病理変化程度のランク基準:

(1)肝臓脂肪変性(×1)

ランク

病 理 変 化

脂肪変性が見られない

±

少数の肝細胞に脂肪変性が見られる

多数の肝細胞に脂肪変性が見られる、肝細胞の脂肪滴は比較的小さい

++

肝小葉内の肝細胞脂肪変性が広範囲に広がっており片になっている、肝細胞の脂肪滴は比較的小さい

+++

肝小葉内の肝細胞脂肪変性が広範囲に広がっており片になっている、肝細胞の脂肪滴は大きい

(2)肝細胞の空胞変性(×1)

ランク

病 理 変 化

肝細胞に空胞変性が見られない

±

少数の肝細胞に空胞変性が見られる

肝小葉中央の静脈及び肝包膜下に巣状空泡変性がみられ、少数に空泡変性が見られる。または中央静脈周囲に1-2層の細胞が存在する。

++

肝小葉の中央静脈周囲の細胞に空泡変性が発生している。病理変化は肝小葉の1/3~1/2に存在し、一部の細胞には空泡変性が見られる。

+++

肝細胞への空泡変性は肝小葉の1/2~1/3に達している、または肝細胞に顕著な空泡変性が見られる。

(3)肝細胞壊死(×3)

ランク

病 理 変 化

肝細胞に巣状壊死は見られない

±

肝組織内に1-2個の点状壊死が見られる

巣状壊死が3個以上見られる、または壊死が静脈周囲に1-2層の細胞として存在する

++

点状壊死、巣状壊死が比較的広範囲に見られ、数も多い。時に壊死は片状をなすまでに拡大している場合もある。また壊死は肝小葉の1/3~1/2に存在している。

+++

肝細胞の壊死は広範囲に見られる、または片状をなしている。壊死内部は炎症性の細胞浸潤が起こっている。

(4)炎症細胞(主にリンパ細胞)浸潤(×1)

ランク

病 理 変 化

炎症性細胞浸潤が見られない

±

肝包膜下に小さな炎症細胞浸潤が見られる

一部の門脈域内または肝包膜下に2~3個の炎症細胞浸潤が見られる

++

門脈域内に多数炎症細胞浸潤が見られ、一部の肝小葉内にも炎症細胞浸潤が見られる。

以上、もし病理変化程度が2つのランクの間であれば、「±」表示を加える。

 (四)実験結果

1.血清ALT、AST値の結果については、表1を参照。

表1 垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用(u/L、n=12)

グループ別

薬剤量(mg/kg)

ALT

AST

正常対照グループ

20ml/kg蒸留水

28.9±3.59

46.8±4.84

肝損傷グループ

20ml/kg蒸留水

174.8±13.4

166.7±19.4

Bifendate Pillsグループ

40

136.3±17.8**

116.7±13.9**

垂盆草低薬剤量グループ

156

158.2±6.78*

139.9±28.8

垂盆草中薬剤量グループ

468

143.5±8.92**

129.8±13.7**

垂盆草高薬剤量グループ

1404

132.7±15.8**

119.8±19.4**

*P<0.05、**P<0.01 VS 肝損傷グループ

2.肝臓病理組織学の研究結果

健全なマウスの肝臓(200×)

健全なマウスの肝臓(200×)

四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

(1)CCL4動物モデルには概ね中央静脈を中心とする病理変化が見られる。病理変化は主に空胞変性、球状変性及び肝細胞凝固性壊死である。少数の病理変化はお互いに融合して片状となり、肝被膜下でも多く巣状凝固性壊死が見られる。病巣には少数のリンパ細胞及び単核細胞の浸潤が見られるが出血は見られない。胆細管にも異常は見られなかった。

 

 

 

垂盆草エキス低容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

垂盆草エキス低容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

(2)垂盆草エキス低薬剤量グループの肝細胞には空胞変性、球状変性及び肝細胞凝固性壊死などの病理変化が見られた。病理変化の程度はCCL4動物モデルと比較したところ軽減しており、平均積分も下降していることから、CCL4動物モデルと比較して顕著な差異があった(P>0.01)。結果は、垂盆草エキス低薬剤量はCCL4起因によるマウス肝損傷に対して保護作用があることが証明された。

 

 

 

垂盆草エキス中容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

垂盆草エキス中容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

(3)垂盆草エキス中薬剤量グループの肝細胞には空胞変性、球状変性及び肝細胞凝固性壊死などの病理変化が見られた。凝固性壊死は主に肝被膜下に分布しているが、病理変化の程度はCCL4動物モデルと比較したところ明らかに軽減しており、平均積分も下降していることから、顕著な差異があることが証明された(P<0.01)。病理変化の平均積分は低薬剤量グループと比較したところ下降していた。結果として垂盆草エキス中薬剤量はCCL4起因によるマウス肝損傷に対して保護作用があることが証明された。

 

 

 

垂盆草エキス高容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

垂盆草エキス高容量+四塩化炭素により損傷を受けたマウス肝臓(200×)

(4)垂盆草エキス高薬剤量グループの肝臓には空胞変性、球状変性及び肝細胞凝固性壊死などの病理変化が見られた。凝固性壊死は主に肝被膜下に分布しているが、病理変化の程度はCCL4動物モデルと比較したところ明らかに軽減しており、病理変化の積分値も下降していることが証明された(P<0.01)。病理変化は低薬剤量グループ及び中薬剤量グループと比較して更に下降していた。結果として垂盆草エキス高薬剤量はCCL4起因によるマウス肝損傷に対して保護作用があることが証明された。またその作用は低薬剤量及び中薬剤量よりも強いことが分かった。

(5)Bifendate Pillsグループの肝臓には空胞変性、球状変性及び肝細胞凝固性壊死などの病理変化が見られた。凝固性壊死は主に肝被膜下に分布しているが、病理変化の程度はCCL4動物モデルと比較したところ明らかに軽減しており、病理変化の積分値も下降していることが証明された(P<0.01)。病理変化は低薬剤量グループ及び中薬剤量グループと比較して更に下降しており、平均積分値も下降していた。その結果、Bifendate PillsグループはCCL4起因によるマウス肝損傷に対して保護作用があることが証明された。また、垂盆草エキス高薬剤量とは薬用が基本的に同じであり、低薬剤量や中薬剤量と比較して若干強いことが証明された。

各グループ測定値はX±Sで表示しており、統計学処理はt検査を採用している。

表2 垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷・肝細胞空泡変性に対する保護作用

グループ別

肝細胞空泡変性

平均積分

1

2

3

4

5

6

正常対照グループ

0

0

0

2

0.5

0.5

肝損傷グループ

2

2

2

2

2.5

2

2.1**

Bifendate Pillsグループ

1.5

0

1

1.5

1

1

1.0##

垂盆草低薬剤量グループ

1

1

2

2

1

2

1.5#

垂盆草中薬剤量グループ

2

1

2.5

1

2

2

1.8

垂盆草高薬剤量グループ

1

1.5

1

2

3

1.5

1.7

注:*P<0.05、**P<0.01 VS 正常グループ

#P<0.05、##P<0.01 VS 損傷グループ

 表3 垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷・肝細胞壊死に対する保護作用

グループ別

肝細胞壊死

平均積分

1

2

3

4

5

6

正常対照グループ

0

0

0

0

0

0

肝損傷グループ

6

1.5

4.5

4.5

6

6

4.8***

Bifendate Pillsグループ

1

1.5

3

2

1.5

3

2.0##

垂盆草低薬剤量グループ

3

2

3

1

3

3

2.5##

垂盆草中薬剤量グループ

3.5

2

3

0

3

2

2.3##

垂盆草高薬剤量グループ

1.5

3.5

3

1.5

1

1

1.9##

注:*P<0.05、**P<0.01 VS 正常グループ

***P<0.001、##P<0.01 VS 損傷グループ

 表4 垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷・肝細胞炎症性浸潤に対する保護作用

グループ別

肝細胞炎症性浸潤

平均積分

1

2

3

4

5

6

正常対照グループ

0

0

0

0

0

0

0

肝損傷グループ

0

1

1

1.5

2

1

1.1*

Bifendate Pillsグループ

0

0

1

1

0

1

0.5##

垂盆草低薬剤量グループ

1

2

1

3

2

1

1.5

垂盆草中薬剤量グループ

0

1

1

0

1

1

0.7#

垂盆草高薬剤量グループ

0

1

1

0

0

0

0.3##

注:*P<0.05、**P<0.01 VS 正常グループ

#P<0.05、##P<0.01 VS 損傷グループ

このことから、垂盆草エキス1404mg/kg、468mg/kg薬剤量グループはCCL4起因による肝損傷を起こしているマウスALT、AST値を明らかに低下させた。この他に垂盆草エキス156mg/kgグループはCCL4起因によって肝損傷を起こしているマウスALT値を明らかに低下させたが、AST値には特に顕著な低下作用は無かったのである。病理学研究において垂盆草エキスはCCL4起因によるマウス肝細胞の空泡変性、肝細胞壊死及び細胞炎症性浸潤を改善させ、顕著な保護作用があることが証明された。

【主要参考文献】

  1. 中华人民共和国卫生部药政管理局  中药新药研究指南(药学、药理学、毒理学)1994
  2. 张岫美、魏欣冰、张斌,安络化纤丸对急性肝损伤的保护作用  中国生化药物杂志 1999;20(1);27
  3. 陈奇,中药药理研究方法学,北京;人民卫生出版社,1993
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