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肝機能のトラブルを乗り越えるための常識と非常識!?

肝機能のトラブルを乗り越えるための常識と非常識!?

新中医学研究所所長 野村正和薬学博士に聞く
肝臓病を研究する薬学研究者でなければ知りえない”真実”

脂肪肝患者は1500万人に迫る勢いで急増し、肝炎ウイルス感染者は300万~370万人もいる。

まさに日本は「肝臓病大国」。肝機能が心配な人は、まず医療機関で診察してもらうことが先決だが、加えて、肝臓にダメージを与えてきた生活習慣を見直すことも大切。よりよい人生を過ごすために何をすればいいのか──。

肝がんへの進行が怖いC型肝炎ウイルスの感染者は
国内に300万~370万人!

肝臓のトラブルで急増しているのは脂肪肝だが、肝炎から肝硬変、さらに最悪の場合、肝がんまで進行してしまう恐れがもっとも高いのは「C型肝炎ウイルス」である。

肝がんで亡くなる人は毎年3万人を超える。

「肝がんで亡くなる方は毎年3万人を超えています。その肝がんの原因の8割以上がC型肝炎ウイルスです。現在、このC型肝炎ウイルスの感染者は国内に300万人~370万人もいるといわれています。

インターフェロンと抗ウイルス薬の併用療法が開発され、有効率はかなり向上しましたが、副作用が激しくて治療が続けられなかったり、効果が上がらないケースもまだまだ少なくありません」とは、生薬による「肝庇護療法」を中心に、肝臓病と生活習慣の関係を研究している新中医学研究所所長で薬学博士の野村正和氏。

現状では、C型肝炎を完全に治せる治療法が見つかっていない。

このC型肝炎ウイルスが見つかったのは1980年代のこと。30年以上経った今も、完全に治せる治療法が見つかっていないのが現状なのだ。

肝庇護薬だけでは、完全に炎症を鎮めるまでに至らない。

「副作用がひどくてインターフェロンの治療ができない患者さんには、肝炎の鎮静化を目的とした『肝庇護療法』が施されています。しかし、今の肝庇護薬だけでは、完全に炎症を鎮めるまでに至らないのが実情。注射剤もありますが、長期間連日のように静脈注射をしなければならないので、患者さんの日常生活での負担が重く、吐き気や下痢、むくみなどの副作用も報告されています。

「肝炎患者の会」などでも広く活用。
抗酸化力を発揮する「垂盆草(すいぼんそう)」!

こうした中、『肝炎患者の会』などでも広く活用されているのが垂盆草。国内では食品に分類されている植物である。「垂盆草は、中国で権威のある薬草辞典にも記されている食用野草で、サルメントシンと呼ばれる成分が含まれています。

このサルメントシンは、肝臓だけに集中して強い抗酸化力を発揮することが知られていて、肝臓から血中に放出される酵素の量を抑える働きをすることが解明されています。つまり、炎症の鎮静化を助け、生活の質を向上させることに役立つと考えられています」

近著で、最新情報を紹介

垂盆草を含めた肝臓病対策についての新情報は、野村博士の近著『肝機能は食で改善できる』(幻冬舎発売)に詳しく紹介されているので、深く知りたい方は、一読してみてはどうだろう。

極端なダイエットは、たんぱく質不足を招く恐れが。

急増している非アルコール性脂肪肝炎。

一方、急増している脂肪肝炎は、アルコールの過剰摂取によるものではなく、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれる、動物性脂肪の摂り過ぎによって肝臓の細胞に大量の脂肪が溜まることで引き起こされる肝炎である。対策としては、肥満を解消するのは大事なこと。だが、だからといって、極端なダイエットをすると、ますます脂肪肝を悪化させてしまう恐れがあるという。

「極端なダイエットは、『たんぱく質不足』を招いてしまうからです。肝細胞の中にある中性脂肪は、たんぱく質と結びついて血液中に送り出され、体の隅々に運ばれてエネルギーになったり、細胞の原料として使われています。ところが、たんぱく質が足りなくなると結びつく相手がいなくなり、中性脂肪は肝臓から出て行けなくなって、どんどん溜まってしまうのです」

垂盆草のサルメントシンは、NASHの炎症を鎮めるのにも役立つ。

このNASHも一部のタイプは肝硬変、肝がんへと進行することが近年になって分かってきた。垂盆草のサルメントシンは、NASHの炎症を鎮めるのにも役立つそうだ。楽しく、よりよい人生をおくるためには、あの手この手の「体のトラブル対策法」を知っておくことが必要なのではないだろうか。

※週刊新潮に掲載

『肝機能は食で改善できる』幻冬舎新書

中国で臨床使用されている垂盆草の国内研究の第一人者である野村正和先生が、垂盆草についての本『肝機能は食で改善できる』(幻冬舎)を出版されました。

野村先生は、財団法人漢方医薬研究振興財団の元・主任研究員で、現在は新中医学研究所を設立。全国肝臓病患者連合会や日本肝臓病患者団体協議会など、国内を代表する肝臓病患者会の要請を受けて垂盆草の講演を精力的に行っています。

第1章 何が肝臓を悪くするのか

肝臓は500以上の作業をこなす寡黙な働き者
たくさんの酵素が詰まっている肝細胞
肝細胞が壊れるとGPTGOTが血液に漏れ出る ほか

第2章 肝機能は食で改善できるという事実

肝臓をリフレッシュして、健康を取り戻す
1日30品目以上をバランスよく食べる
肉も魚も食べて、必須アミノ酸を補う ほか

第3章 肝庇護療法肝機能数値を下げる

大阪は肝がんが日本一多い
肝庇護療法の問題は、よく効く薬がないこと
中国人は知っている酵素低下薬の真実 ほか

 肝臓の専門医ではなく新中医学研究者の私が本書を執筆した理由は、肝臓病について本当に正しい情報を提供したいと考えたからです。

「不治の病」であったウイルス性肝炎も、今では「治る病気」となりつつあります。しかし、いまだに特効療法がない肝臓病も多く、毎年3万人以上の方がなくなっているのが実情です。

本書を手にとってくださった方が、肝臓病に対する認識を深め、正しい予防法と治療の道を選択することで、健やかな未来を歩んでくださることを心から願っています。
(「はじめに」より抜粋)

垂盆草の資料

垂盆草について

  1. 血中ALT(GPT)値の改善
    約70%の患者のALT(GPT)値が改善した上、天然の薬草であるため副作用はほとんどない。
  2. 垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用
    急性肝損傷に対して保護作用があり、ALT値、AST値を低下させる。顕著な改善作用がある。
  3. アシクロビルと垂盆草によってB型肝炎を治療した時の比較
    B型ウイルスに対して抑制効果がある治療薬アシクロビルと比較しても、顕著な差は見られない。
  4. 垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 1, 2, 3
    垂盆草を含む脂肪肝の治療効果は顕著であり、肝機能を改善させ、血中の脂質を低下させる。
  5. 垂盆草と脂肪肝の研究資料 1, 2
    肝機能異常の患者には垂盆草を与えるなど、正しい医療が行われるべきである。
  6. 垂盆草の臨床データ ALT(GPT), AST(GOT), γ-GTP
    被験者(男女27人)の垂盆草服用による各数値の推移と詳細データ
  7. 垂盆草の効能と主治
    中国の医療では、垂盆草に解熱・解毒・鎮痛・腫瘍消失・黄疸消失・湿邪排除作用が認められ、湿熱・黄疸・小便不調時にも使用されている。
  8. 慢性肝炎治療薬の総有効率の比較
    3か月間で70%以上の患者のALT(GPT)が低下、短期間の肝機能改善に優れている。既存の治療薬と併用すればより良い効果を得やすい。
  9. 垂盆草とウコン、田七の比較実験資料
    田七は治療効果が極めて緩慢、ウコンは多量服用するとかえってよくない、垂盆草は顕著な改善作用が見られる。

肝臓の病気に関して

  1. 中薬脂質低下合成剤による脂肪肝治療の臨床研究
    垂盆草を含む脂質低下合成剤による脂肪肝の治療効果は顕著、肝機能を改善させ、血中の脂質を低下させる。
  2. C型肝硬変におけるALT(GPT)の年平均値の推移と肝発がんとの関係
    ALT(GPT)値と肝硬変以降の一般的な関連性について
  3. HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療
    HIVとC型肝炎ウイルスとの相互作用や類似点から見た肝炎治療の研究

垂盆草とウコン、田七の比較実験資料

垂盆草・田七・ウコンの肝臓内のトランスアミナーゼに対する薬理比較の総括

胡軍 中国薬科大学

【摘要】
本文は田七ウコン垂盆草エキスのCCL4(四塩化炭素)起因によるラット急性肝臓損傷に対する保護作用の実験を行い比較したものである。結果は、田七には服用量が多く、治療効果が極めて緩慢であるなどの欠点がある。ウコンは少量服用すると酵素低下作用があるが、多量服用するとかえって酵素が上昇する傾向にある。一方、垂盆草はCCL4起因によるラット急性肝臓損傷に対して顕著な保護作用があり、かつ血清中のALTASTレベルを低下させ、病理組織学研究においても顕著な改善作用が見られたのである。

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垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用

垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス肝損傷に対する保護作用

張岫美、王菊英、婁海燕、劉慧青
山東大学医学院薬理学研究所 山東省済南市文化西路44号 250012

【摘要】

当実験では垂盆草エキスのCCL4(四塩化炭素)起因によるマウス急性肝損傷に対する保護作用を研究した。結果は、垂盆草エキスのCCL4起因によるマウス急性肝損傷に対して保護作用があり、血清ALT、ASTレベルを低下させた。また病理組織学研究においても顕著な改善作用があったことが証明された。

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垂盆草とウコン・田七との比較

日本でよく知られている肝臓に良い食品にはウコン田七などがあります。ウコンのクルクミン、田七のサポニンが有効成分となって肝臓に胆汁排泄促進作用や血流改善作用などを促すと言われています。しかし、最新の研究結果により、ALT(GPT)低下作用に関しては垂盆草のほうがウコンや田七よりも高いことがわかりました。

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垂盆草から得られる肝保護剤、該肝保護剤を含有する医薬又は食品、及び垂盆草から得られる新規メガスチグマン化合物

垂盆草から得られる肝保護剤、該肝保護剤を含有する医薬又は食品、及び垂盆草から得られる新規メガスチグマン化合物

【課題】ベンケイソウ科植物である垂盆草より得られる肝保護剤、肝保護効果を有するヒト又は動物用医薬もしくは食品、さらに、垂盆草の抽出成分を分離、精製することにより得ることができる新規メガスチグマン化合物を提供する。

【解決手段】垂盆草の全草、水もしくは低級脂肪族アルコールの含水物等により垂盆草を抽出して得られる抽出液、又は前記抽出液を濃縮して得られる抽出エキス、 又は該抽出液等を分離、精製して得られるメガスチグマン化合物を含むことを特徴とする肝保護剤、この肝保護剤を含有するヒト又は動物用医薬及び食品、並び該抽出液等を分離、精製することにより得ることができる新規メガスチグマン化合物。

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垂盆草から得られる脂肪代謝改善剤、該脂肪代謝改善剤を含有する医薬又は食品、並びに垂盆草から得られる新規メガスチグマン及びフラボノイド化合物

垂盆草から得られる脂肪代謝改善剤、該脂肪代謝改善剤を含有する医薬又は食品、並びに垂盆草から得られる新規メガスチグマン及びフラボノイド化合物

【課題】ベンケイソウ科植物である垂盆草より得られる脂肪代謝改善剤、脂肪代謝改善効果を有するヒト又は動物用医薬もしくは食品、さらに、垂盆草の抽出成分を分離、精製することにより得ることができる新規メガスチグマン及びフラボノイド化合物を提供する。

【解決手段】垂盆草の全草、水もしくは低級脂肪族アルコールの含水物等により垂盆草を抽出して得られる抽出液、又は前記抽出液を濃縮して得られる抽出エキス、 又は該抽出液等を分離、精製して得られるメガスチグマン及びフラボノイド化合物を含むことを特徴とする脂肪代謝改善剤、この脂肪代謝改善剤を含有するヒト 又は動物用医薬及び食品、並び該抽出液等を分離、精製することにより得ることができる新規メガスチグマン及びフラボノイド化合物。

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垂盆草の効能と主治

垂盆草の効能と主治

(一)垂盆草(日本名:ツルマンネングサ) Sedum sarmentosum Bunge

ベンケイソウ科多年生肉質草本植物の垂盆草の新鮮で乾燥させた全草である。

  • 【別名】
    (中国名)狗牙草、石甲草、三叶佛甲草、地蜈蚣草
  • 【植物形態】
    多年生肉質草本で、茎は地上を匍匐しており、種子が盆の中についた場合に長い茎が盆を沿って垂れ下がることから垂盆草と名づけられた。根が生え易く、高さは10~20cm程度、葉は輪生し、肉質で針を逆にした形もしくは矩円形である。長さは1.5~2.5cm、幅3~6mm、先端は尖っており、基部に矩がある。花弁は5枚で、淡い黄色で、頂点は短く尖っている。おしべは10本あり、比較的花弁は短い。鱗片は小さく四角形である。心皮は5つで若干開いている。果実は5つである。花期は4-5月で、果実の実る時期は6-7月である。
  • 【生態分布】
    山部崖の岩石地帯、狭隘部、道端、川岸に植生する。また栽培専門家もいる。中国東北地方、河北、河南、江蘇、安徽、浙江、江西、湖北、四川省など各省に植生している。主産地は浙江、江蘇及び安徽省である。
  • 【薬用部位】
    全草、異物を除去して、日干しにするか新鮮な物を使用する。夏秋季に摘採する。
  • 【成分、薬理研究】
    成分:垂盆草内に主として含有されているのは垂盆草配糖体sarmentosineである。Glc-O-CH2CH=C(CH2OH)CN 垂盆草配糖体この他にアミノ酸、フラボン、トリテルペノイド及びステロール等である。アミノ酸は主にアスパラギナーゼ(L-aspargine)、アスパラギン酸(L-aspartic)、アラニン(L-α-alanine)、ロイシン(L-leucine)、チロシン(L-tyrosine)、バリン(L-valine)などを含有する。

[薬理研究]

  1. 肝臓保護、酵素抑制作用
    動物実験により垂盆草には肝臓保護作用があることが証明された。実験動物のALT、γ-グロブリン値及び肝臓の腺維化は明らかに低下、抑制され、酵素抑制成分は垂盆草生薬及び乾燥させた全草の水溶部分に存在している。希釈アルコール抽出物の水溶部分の主な成分は垂盆草配糖体である(構造式は上記参照)。その他の研究では四塩化炭素中毒になる前に、事前にラットがフェノバルビタールナトリウムによって引き起こされた急性黄疸型肝炎にたいして、垂盆草は顕著な治療効果を現した。例としては対照グループラットの血清中のビリルビンは1.6mg/dlであったが、垂盆草グループはわずかに0.5mg/dlであった。垂盆草は持続して用い6週間以上治療したところ、病理学観察において肝細胞の炎症性浸出物は明らかに消失し、門脈域の炎症性細胞の浸潤も消失し、壊死巣も減少した。このことにより垂盆草配糖体の酵素抑制作用の主用なものとしては細胞の損傷を改善させることによって得られるものであることが証明された。異なる種類の動物の肝細胞膜抽出物を抗原として、マウスの免疫性肝炎病理変化を作り出し、2、5、9週目と区切ってマウスの血清と肝臓抗原を取って免疫を対流させて電気泳動をおこない、同時に肝細胞切片をとってクッペル細胞の増加、門脈域の中性及び単核細胞の浸潤について観察したところ、肝細胞の点状壊死等の状況から見て、垂盆草には免疫性肝炎に対しては治療作用がないことが証明された。
  2. 免疫抑制
    ラット、マウスの免疫実験中に、垂盆草配糖体の薬剤量が500mg/kgまで増加した場合、実験動物に対して顕著な抑制作用が見られた。またマウスの胸腺細胞を減少させたため対照グループの62%に止まった。ラット移植片対宿主反応を抑制する反応の実験中に、ラットの脾臓細胞リンパ節の増加指数は対照グループよりも低く、その抑制率は74%であった。この他にマウスの脾臓プラクを形成する細胞を抑制させたが、これは健全なマウスの42-46%にすぎなかった。以上、これらの実験により体液免疫にも抑制作用があることが証明された。垂盆草配糖体は動物実験を通して生体細胞免疫に対して顕著な抑制作用が証明された。また、胸腺細胞数を減少させて、T細胞の介在による移植片対宿主反応やT細胞依存による抗原-SRBCの抗体形成細胞を抑制する。副作用も小さく、毒性も低い。この他に垂盆草を服用した後のリンパ細胞の転化率及びマクロファージ機能を明らかに低下させる効能があり、有効に細胞免疫反応を抑制させることによって、肝細胞の損傷を減少させることによってALT値を低下させた。大部分の患者はALT値の低下に伴い、臨床症状も改善または治癒し、細胞免疫指標も明らかに低下したが、一部の患者の指標は元々低く、服薬後にALT値が減少し臨床症状も改善したが、逆に細胞免疫指標は上昇してしまった。しかしながら、これはひとつの将来性のある免疫抑制剤であると考えられる。調査により本製品は8-9月に採取すると、有効成分の含有量が最高であり、品種は江蘇、山東、浙江麗水や桐盧一帯の産地のものが良好なものとされている。その中でもミツバベンケイソウ(Sedum vertcillatum)の含有量が高く、錠剤製造の原料として使用することができる。

[主治と効能]

中医では、垂盆草には解熱解毒及び鎮痛、腫瘍消失、黄疸消失、湿邪排除作用があり、湿熱、黄疸、小便不調時に使用する。

効能

主治

解熱・解毒

癰疽・腫瘍、毒蛇の咬み傷、火傷、咽喉腫れ

湿邪の排除、黄疸の消失

湿熱、黄疸

酵素抑制

各タイプALT、AST値が上昇している肝炎

垂盆草の各種薬剤は肝炎治療に使用されてから30年が経過した。臨床では各タイプの肝炎に対して割合良好な酵素抑制作用を示した。垂盆草単品の各種薬剤の治療効果は70.4~74.4%の間である。例としてはその他の関連する薬物による“復方垂盆草”の場合は、酵素抑制作用は82-93%にまで上昇し、これは五味子製剤(84.2%)やBifendate(91.1%)の治療効果と相似していることが証明された。治療効果が高く、毒性が低いことから現在までに各型の肝炎治療に対して広範囲で使用されている。

楊金龍等はアシクロビルと垂盆草を使用してB型肝炎治療に関して比較を行った。アシクロビル750mgと塩化ナトリウム500mgを調合して毎日1回静脈注射したところ、1ヶ月経過後に慢性B型肝炎が治療できた患者は31例だったのに対し、垂盆草10gを経口服薬したところ、1ヶ月経過後には20例治療できたということで比較をした。治療グループは症状が改善された。例としては脱力感、集中力の欠乏、腹部の腫れ、肝臓の痛み、ALT上昇等の総有効率はそれぞれ94%、95%、80%、100%、79%であった。一方、垂盆草グループはそれぞれ89%、1%、3%、100%、70%であった。両グループ差には特に顕著な意義はなかった(P>0.05)。治療グループのHBeAgが陰性に改善したのは14/31であり、対照グループは無効であった。

劉翔等は垂盆草を使用して頸部の痛みを持つ患者50例を治療した。局部に垂盆草を敷いて15分経過時に、赤腫れ、腫れ痛が緩和した患者は37例あり、15~30分間の間に緩和した患者は13例であった。また、3日間で治癒した患者は7例、4日間治癒は12例、5日間治癒は31例であった。つまり5日以内に全て治癒させることができるのである。これは一種の簡単で、経済的にも有効な治療法である。

蘭義明は垂盆草を敷くことによって帯状の疱疹をもつ患者50例を治療したところ、治癒39例、好転10例、無効1例で、総有効率は98%であった。最短の薬剤使用日数は3日、最高は7日であった。

注意:筆者は肝寿峰を使用して5例のB型肝炎患者及び1例の慢性B型肝炎の治療を行ったが、共に良好な成果が得られた。詳細は下記の表を参照。

1.肝寿峰による5例のB型肝炎を治療した(下の表を参照)。

肝寿峰による5例B型肝炎の治療結果

番号

年齢

性別

診断

ALT

治療前

治療後

1ヶ月

2ヶ月

3ヶ月

4ヶ月

5ヶ月

1

41

男性

慢性B型肝炎(軽度)

280U/L

240

220

240

260

220

2

53

男性

慢性B型肝炎(軽度)

200U/L

220

180

200

3

31

男性

B型肝硬変(食道静脈破裂出血歴)

96U/L

42

38

32

26

26

4

34

男性

B型肝硬変(腹水歴)

84U/L

64

28

38

40

24

5

52

男性

アルコール性肝硬変非代償

1668U/L

240

80

40

28

26

3例の肝硬変の治療効果は良好であるが、2例の慢性B型肝炎に対しては無効であった。

2、慢性B型肝炎(軽度):

ウイルス抑制及び酵素抑制を共に採用して治療を行ったところ、良好な成果を得た。

男性、45歳。慢性B型肝炎が発病して10数年になるが、2000年3月よりALT、ASTの上昇が見られた(ALT:240U/L、AST:150U/L)。ウイルスマーカーはHBsAg+、HBeAg+、抗-HBc+を示した。またHBV DNA100Pg%で、他の項目は正常であった。以前より多種の肝臓病治療薬を使用して治療してきたが効果がなく、2000年6月14日より共同治療を行った。即ち、インターフェロン、fanciclovir、チモシン、復方垂盆草カプセルを使用して治療を行った。インターフェロンab(商品名:賽諾金)500万U、毎日1回皮膚注射を行う。30回行った後500万U投与すること。一日おきに皮膚注射する。治療期間は合計で9ヶ月である。Fanciclovirは1回につき500mg投与する。1日3回で治療期間は合計6ヶ月である。復方垂盆草カプセル(肝炎霊4号)1回につき4粒服用する。1日3回、治療期間は合計で6ヶ月間続ける。

投薬から3ヶ月経過後にALT、AST値は正常値にまで低下し、HBsAg、HBeAgは陰性、抗-HBcも陽性に変化した。またHBV DNAは10Pg%にまで低下した。9ヶ月目を迎えるとALT、AST値は一貫して正常値を保ち、抗-HBcは陽性、HBV DNAは陰性状態を持続した。2001年12月25日にB型肝炎ウイルスマーカーを再検査したところ、抗-HBS+、抗-HBe+、抗-HBc+のウイルスマーカーが出現しており、HBV DNA陰性の状態を示し、ALT、AST値は正常値を保持した。2002年6月6日までに再度検査を行った際も上述した結果を保持しており、患者は全快していた。

[用法と使用量]

  1. 生薬:
    (1)乾燥した垂盆草:毎回10-50gを煎じて服用する、一日3回。
    (2)新鮮な垂盆草 :毎回50-250g煎じて服用する、一日3回。または垂盆草錠剤、垂盆草シロップを作っても良い。
  2. 垂盆草沖服剤:沖服剤中には1袋につき垂盆草配糖体24mg含有されている。毎回1-2袋服用する。一日3回。
  3. 復方垂盆草カプセル:
    垂盆草、ウツボグサ、山豆根など多種の漢方薬を精製して作られたものである。カプセル1粒につき抽出物250mg含有している。毎回4-6粒のカプセルを服用する。一日に3回服用。

[注意事項]

垂盆草のALT抑制作用は有効なもので、各型の肝炎の中でも多くはALTが低下した後に、患者の肝臓病の各種症状も改善、回復するが、但し肝細胞損傷は異なる程度に応じて回復する。そのため多くの患者、特に慢性肝炎患者は服薬停止後まもなくしてから再びALTが上昇する。そのため垂盆草は臨床応用時に、その他の酵素抑制剤と同様に、比較的長い時間応用することによって治療効果が安定する。筆者の経験に基づくと、薬はALTが正常値まで低下するまで使用し、同等の薬剤量を少なくとも半年以上使用して徐々に量を減らしていき、1年以上持続して服薬停止すると再発率は最低値にまで低下する。垂盆草の毒性は非常に低いが、服薬後に胃部に違和感を感じる患者もいる。しかし、量を減らすか元の使用量を1日に4、5回に分ければ消失する。

参考文献

  1. 上海延安制药厂,肝炎新药-复方垂盆草糖浆,医药工业 1973;(1);59
  2. 杭州中药一厂,垂盆草片,中草药通讯 1973;(4);13
  3. 上海市中医研究所,等,应用垂盆草治疗急性和慢性活动型肝炎1000例的初步报告-对谷丙转氨酶活力检测情况的观察,医学情报交流 1973;(7);27
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  5. 上海市中医研究所内科,垂盆草治疗活动性肝炎1000例疗效观察;医学研究通讯 1975;(2);34
  6. 吴光景 垂盆草有效成分的初步研究,芜湖医药 1978;(2);64
  7. 方圣鼎,等,有效成分垂盆草甙的分离与结构,科学通报 1979;(9);431
  8. 翟世康,等,垂盆草甙免疫抑制作用的研究,中华微生物与免疫学杂志 1982;(3);145
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  11. 韩絮琳,等,肝复灵4号治疗病毒性肝炎的疗效观察,第二军医大学学报 1999;20(8);586
  12. 中华微生物和免疫学杂志 1982;1(3);145
  13. 李静芳等,药学画报 1981;16(5);269
  14. 杨金龙等,阿昔洛韦与垂盆草治疗乙型肝炎的比较,新药与临床,1994;13(3);175
  15. 刘翔等,垂盆草治疗颈痛50例,中国中西结合外科杂志 2001;7(2);120
  16. 兰义明等,垂盆草外敷治疗疱疹,福建中医药 1999;30(4);46

HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

  • 著者:Vincent Soriano, Rafael Rodriguez- Rosado, and Javier Garcia-Samaniego
  • 誌名:AIDS 1999 13:539-546
  • 翻訳:広島大学医学部附属病院 藤井輝久
  • 1999.8.5

はじめに:
開発途上国では人口の2%近くがHCV に罹患している。HCV は慢性肝炎の原因として最も一般的な疾患で、かつ肝移植の主な適応症である。HCV 感染症は急性期を経て80%以上高率に慢性肝炎へ移行し、それから20-40 年後には肝硬変、最後には肝癌へ進行する。
HCV とHIV の重複感染はしばしばみられる。それは両方のウイルスとも同じ感染経路だからである。静脈内麻薬常用者におけるHCV 感染の頻度は75-90%であり、ある血友病患者のグループではほぼ100%である。いくつかの国ではHIV 感染の最大のリスクグループは静脈内麻薬常用者であり、そういった地域では非常に多くのHIVとHCVの重複感染がある。EuroSIDAの統計調査では3048名のHIV 感染症患者のうち約33%がHCV 抗体陽性で、また静脈内麻薬常用者の75%以上が重複感染であった。

HCV とHIV の相互作用:
HIV 感染症の予後が、主にHAART が導入された後有意に改善したことにより、慢性肝疾患が一般的となり、HIV とHCV の重複感染症患者における罹患率や死亡率を決める重要な要因となっている。マドリッドのリファレンスHIV/AIDSインスティテューションにおいて、入院の原因をレトロスペクティブに解析すると、ここ5 年間で1670 例の入院があり、そのうち8.6%が末期の肝疾患であった。HCV 単独、または他の肝好性ウイルスとの重複感染の頻度は88.6%で、肝の合併症が直接死因となったケースが研究期間内で15 例あり、入院中の死亡原因としては全体の4.8%を示した。そして死亡のうち5 例がHIV 感染症患者であった。
HIV 感染症に関連した免疫不全はHCV感染症の経過を進行させるようである。あるスペイン人のグループで、HIV とHCV の重複感染の静脈内麻薬常用者では、15 年後の肝硬変進行例が25%にも及んだ。それに対しHIV陰性の場合では6.5%しか肝硬変に進行しなかった。さらに血友病のグループでHIV とHCV の重複感染がある場合、HCV 単独感染に比べ肝不全への進行例が21 倍にも増加することが分かった。最近、HCV 感染はCD4 数の低下を引き起こしてHIV 感染症を進行させる補助因子であることを示唆している報告がある。
HCV 感染症は、感染した肝細胞を除去する細胞障害性T 細胞や、T 細胞が産生する直接ウイルスの複製を抑制するサイトカインにより制御されている。ウイルス感染に対する免疫反応は、2 つの形で現れる。CD4Th1 細胞が細胞障害性T 細胞(CD8)の反応を活性化するサイトカインを産生し、一方CD4Th2 細胞は、HCV に対する特異的な抗体の産生を誘導する。CD4Th1 サブセットの反応不全が、HCV 感染の慢性化と関係することが示唆されている。この反応不全が細胞障害性T 細胞のHCVを排除することをさらに困難にしているかもしれない。この可能性は、CD4 細胞が数的機能的に不全状態であるHIV感染症患者での、HCV感染症の活動性が高いことを説明しうる。
現在新たな抗レトロウイルス治療薬の使用や、HIV 感染症の最も一般的な治療法としてHAART の使用を組み合わせる抗HIV 治療の最近の変化により、患者は将来に希望を持てるようになった。この臨床上の利益は、ウイルス複製を最大限抑えた結果である。HAART 中の患者で見られる免疫能の回復により、HCV を含む他の多くの病原体に対しても防御できるようになる。

HCV とHIV の類似点:
HIV とHCV はいくつかの共通の生物学的特徴を持つ。両者ともRNA ウイルスで、HCV はフラビウイルス属に属し、HIV はレトロウイルス属に属する。フラビウイルスは一本鎖RNA を持ち、一方レトロウイルスは二本鎖のRNA を持つ。両者のウイルスの生活環にはいくつかの違いがある。HIV-RNA は逆転写酵素によりDNA に転写され、プロウイルスを構築して感染細胞のゲノムに統合される。この統合が非可逆的なHIV 感染症の原因となる。反対に、HCV のゲノムは細胞のゲノムに統合されず、肝細胞の細胞質でウイルスの複製が起こる。この非統合により、HCV を撲滅し感染症を治癒させることはHIV に比べれば容易であることが予想される。
他の両ウイルスの特徴は、それぞれ多種のウイルスゲノムが存在し、多くのジェノタイプ、いわゆる亜型と『マスターシークエンス』近似の遺伝子的多型性を作り出していることである。この遺伝子的多型性はRNAウイルスでは、各々のポリメラーゼ(HIV は逆転写酵素、HCV はRNA ポリメラーゼ)の転写ミスの結果により複製エラーが高率に起こることによって生じる。これらの酵素は、DNA 依存性のDNA ポリメラーゼに比べて、高率にエラー産物を生ずる。逆転写酵素による変異は1×104-5 に1 回の確率で起こり、それはHIV が1 回転写されるごとに1 つの変異を生ずることを意味している。HCV についても同様の数字が挙げられる。このウイルスは一番離れているもの同士で、34%の遺伝子相同性を有する。この遺伝子的多型性はHIV はさらに幅広く、それはウイルスの二つのRNA 鎖の間で、『鎖選択』と呼ばれる現象が起こった後、再び二本鎖となるからであろう。この多型性により、両ウイルスは周囲の状況に順応してより存在しやすいよう進化し、免疫機構や薬物からすり抜けている。両ウイルスが最も変異に富んでいる遺伝子領域は膜蛋白をコードしている領域で、これは免疫機構の圧力があっても、ウイルスを産生できることに関係する。HCV におけるこの部位の多型性は、6 つのジェノタイプに分類され、またいくつかのフェノタイプにも分類されている。同じように、HIV-1 でも3 つの大きなタイプに分類されており、それらはM(main)の10 のサブタイプと、O(outlier)、最近言われ始めたグループN である。
ウイルスの種の分類するのは、ただ単に学問的興味だけでなく、臨床上有用だからである。同じウイルスでもある種では、特定の標的となる細胞を持っていたり、抗ウイルス薬の感受性が違っていたり、同じ感染経路でも感染性が違う。HCV では、サブタイプ1b は全ての他のサブタイプに比べインターフェロン治療の反応性が悪い。さらに、いくつかのサブタイプでは、特定の世代、地域、リスクグループで非常に多いことがある。(例:HCV サブタイプ3 はヨーロッパの静脈内麻薬常用者に多い。)
血中に循環しているウイルス粒子を検出し定量するいくつかの増幅技術により、HIV とHCV 間の他の類似点に関する情報を得ることができる。最近、血中でのウイルス粒子の平均寿命が5 時間以内である点や、驚くべきスピードでウイルスの世代交代が起こっている点など両ウイルスの動態に関して類似点が報告されている。HCV は、1 日に1011-12 産生されると概算されている。さらに以前の指摘と違って、HCV またはHIV 感染者のウイルス量は、ほとんど一定で変化は小さく0.5log 以内である。これにも関わらず、違う患者では有意な差を示す場合がある。HCV 感染症患者でウイルス量が多い者は、HIV 非感染者と比べHIV重複感染者の方が多いことが報告されている。さらにHCVのウイルス量は、CD4細胞数を反映するかのように、HIV 感染症患者では免疫不全のレベルと逆送関する。

なぜHIV 重複感染のある患者のC 型肝炎を治療するのか? :
最近になって、HIV 感染症患者の生命予後に対し肝疾患の関与が明らかになり、HIV 感染症患者でも慢性C型肝炎の治療に関心が向けられるようになった。表1 にこれらの証拠を示す。1997 年9 月のNIH のConsensus Conference でHCV感染症の治療に焦点が当てられ、HIV と重複感染している慢性C 型肝炎の患者では、疾患の進行を早める可能性があることが提起された。それで、HIV 感染症が安定しており、臨床的にも機能的にも安定した状態の患者では、治療を考慮すべきであると考えられた。HCV 治療の一般的なrecommendation によると、それに該当する患者は、55 才未満、持続的にトランスアミラーゼが高値(正常の1.5 倍以上)、血中でのHCV 検出、肝生検で活動性があるものである。
ここ2 年間HIV 感染症治療としてHAART の利用が広まるとともに、肝毒性の報告件数も増加している。我々の最近のスタディでは、HAART 開始後14%近くの患者で肝毒性を来している。肝毒性の頻度は他のリスクグループに比べ、静脈内麻薬常用者の方が高く、これは、このリスクグループではHCV 感染症の頻度が高いことが直接関係している。それでC 型慢性肝炎は、肝毒性を惹起する因子の一つであり、HAART 以前のHIV 感染症患者においても、HCV 感染症の治療には重大な支障があった。

α インターフェロン治療
αインターフェロンは最近になるまで、慢性C型肝炎の治療として唯一認められていた治療であった。HIV 非感染者における持続有効率は21%であり、その率はインターフェロンの投与量依存性に上昇する。HIV 感染者においてもその有効性はほぼ同等であるが(表2)、CD4 細胞数が少ないほどその率は低下する。さらに、HIV 感染症患者で持続有効性を示すものは、免疫不全が進行するにも関わらず、長期間の観察でもHIV 陰性者に比べ再燃することが少ない。このことは、これらの患者ではHCV 感染症を根治できたことを示す。
肝の線維化や肝構築組織の破壊の状態は予後判定のマーカーとなり、またインターフェロンの有効性と密接に関係する。最近のスタディでは、HCV とHIVの重複感染の患者は、HIV 陰性者に比べ線維化や組織の破壊の程度がひどく、治療に反応しにくいことが報告されている。
持続有効率とインターフェロンの総輸注量との関連性について、慢性C 型肝炎の治療として現在一般に使用されている量が至適量とは言えないようである。事実、血中からウイルスを消失させるのに、インターフェロンの高用量が勧められ、投与間隔が短いほど長期間持続させる事ができる。現在行われているいくつかのスタディでは、最初の1-2 週間高用量で投与間隔を短くしてインターフェロンを輸注し、その後維持量とする’導入-維持’レジメンの評価が行われている。
研究段階であるが、高用量で投与間隔の短いインターフェロン療法や、ポリエチレングリコールと共有結合させたインターフェロンの登場の必要性が高まっている。このポリエチレン化インターフェロンは、共有結合が徐々にとれて、インターフェロンをゆっくり放出させる。さらに、インターフェロン濃度を持続的に保つことで、ウイルス抑制により有効となる。この形のインターフェロンの他の重大な利点は、長期間治療が必要な際に問題となる投与方法が簡単であることが挙げられる。長期間インターフェロンを続けることが持続的有効性を高めることに繋がるのは既に証明されている。

HCV 感染症に対する新薬との併用療法
HCV とHIV に共通するウイルス学的特徴が知られるようになってから、HIVの分野において学んだ経験から、HCV 感染症の治療に対し新たな試みがされるようになった。αインターフェロンの単回投与により、24 時間以内にHCV ウイルス血症を抑制することができるが、これはHIV ウイルス血症がHAART により抑制されるよりも有意に早く、このことよりHCV 感染症のウイルス動態はHIV よりも早いことがわかる。αインターフェロンのような1 種類の薬剤の投与によるウイルスの選択的抑制では、ウイルスの寿命が短く高率に変異を起こす点を考えると、薬剤耐性株を容易に作りウイルス学的治療失敗に繋がる。このことは、HIV 感染症においては既に証明されており、現在の抗レトロウイルス療法の治療ガイドラインにある多剤併用療法の使用を推奨する根拠となっているが、HCV 患者において治療失敗例が、HCV変異株によるインターフェロン耐性が原因であるといった根拠はない。しかしHCV ジェノタイプ1b の患者におけるインターフェロンに対する反応性の悪さは、インターフェロン感受性決定部位(Interferon-sensitivity determination region: ISDR)が存在するNS5A 遺伝子の特徴的シークエンスと関係している。HCV 感染症のこの特徴は、HIV-2 やHIV-1 グループO における非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対する耐性獲得の機序に類似しており、そのためそれらのタイプでは、HIV-1 グループM とは違い、それらの薬剤に対し自然耐性を持つ株の出現が見られる。
HCV に対する武器は、近年有意に増えている。他の疾患で使用されていた抗ウイルス剤のリバビリン、アマンダジンとインターフェロンの併用療法を慢性C型肝炎の患者に使用することにより、持続有効率がリバビリンの場合50%近くに上昇した。現在HIV 感染者におけるHCV 感染症の治療に、この併用療法を用いた臨床研究が2 つ行われている。リバビリンは広い抗ウイルススペクトラムを有する合成ヌクレオシド系薬剤である。アメリカでは、その薬剤は小児の呼吸器のウイルス感染症の治療のためのエアロゾールタイプが最初に承認された。いくつかのスタディにより、この薬剤のHCV に対する確かな有効性が証明された。この薬剤は慢性C型肝炎の治療に単剤として使用した場合、血清ALTは下がるが、持続的有効性はほとんどない。このためリバビリンはC型肝炎に対し単剤投与では承認されず、ほとんど常にインターフェロンとの併用療法で用いられる。最近まで、慢性C型肝炎の治療としてのインターフェロンとリバビリンの併用療法は、再燃例やインターフェロン不応例のみにしか認められておらず、第2 選択であった。しかし最近、我々の第1 選択はこの併用療法であり、インターフェロン単独療法よりも高い持続有効率を示すため、標準的方法となりつつある。最も重要な副作用は、可能性としては低いが、リバビリンによる溶血性貧血であるが、それ以外はインターフェロン単独療法と同程度の発生率であった。
他の抗ウイルス剤では、未だに抗ウイルスメカニズムが明らかになっていないが、インフルエンザの治療や予防に認可されているアマンダジンもHCV に対し有効性を示している。アマンダジンとαインターフェロン併用療法にて高い有効性(投与後3ヶ月におけるHCV のクリアランス)を示したといういくつかの報告がある。アマンダジンはαインターフェロンに比べ廉価(アマンダジン30 ドル/月、αインターフェロン500 ドル/月)で、内服投与(100mg を1 日2回)でしかも非常に飲みやすい。現在αインターフェロンとリバビリンまたはアマンダジン療法を用いたHCV に対する2 剤、3 剤併用療法の有効性と安全性を検討する研究が進められている。現在まで、HCV の治療に対しアマンダジンはFDA の認可を受けていない。新しい抗HCV 剤の初期使用や併用療法を盛り込んだスタディにより、2、3 年前に抗レトロウイルス療法により起こった出来事の再現になるであろう。
HCV 撲滅のために、新しい薬剤の併用や新しい治療戦略など多大な努力がされているにもかかわらず、標準的なインターフェロン療法やインターフェロンとリバビリンの併用療法に有効を示す慢性C 型肝炎患者は半分にも満たない。だからこそ新しい薬理学的オプションを持つ薬剤や治療戦略が必要である。インターフェロンは、HCV のウイルス動態をもっと効率よく抑制するよう、もっと有効的に使用することにより、持続有効率を上げることができるかも知れない。それには、HIV 感染症の治療で既に用いられている段階であるが、HCV 蛋白の分子構造の理解に裏付けされた特異的な抗ウイルス剤の開発を行うなど、HCV 感染症の治療に向けてもっとウイルス学的アプローチが必要となるであろう。プロテアーゼやヘリカーゼインヒビター等のいくつかの新しい薬剤が現在研究中であるが、これらはウイルスの複製を抑制し急性HCV 感染症の予防に対する有効性が期待されている。HCV プロテアーゼやヘリカーゼの構造は既に報告されているが、これらのインヒビターの効果を調べるための適当な培養細胞や動物モデルがないことが、新たな併用療法の開発に対し大きな障害となっている。HCV 感染症の治療のための他の分子学的なアプローチとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボゾームの使用を含めた研究が進行している。アンチセンスはHCV ゲノムからのHCV 蛋白転写を抑制し、一方リボゾームはウイルスRNA を含めRNA を選択的に分解する。最近CMV 網膜症の治療にアンチセンス薬剤のformivirsen がFDA で初めて承認されたことにより、HCV を含めた他のウイルスに対し同様の効果を有するかどうかの研究に拍車をかけるであろう。
HIV の分野では、現在併用療法が標準で、単剤や2 剤併用療法はもはや推奨されていない。さらに、重症の免疫不全のある患者では初期には併用療法を用いず少し待っていたが、現在では全ての患者にできるだけ早く治療を開始することが当然となっている。HCV 感染症に関しては、終末期の肝疾患(肝硬変)になる前に治療することが強く推奨されている。HIV の例では血漿ウイルス量と薬剤有効性の関係はまだ完全に確定されていないが、HCV ではベースラインの血漿ウイルス量は治療の有効性に直接関係してくる。HCV ウイルス量の高い患者では、インターフェロン単独療法の持続有効性は7%に満たない。現在までは、併用療法は治療不応性やインターフェロン療法後再燃した患者に限られているが、特に高いHCV-RNA レベルを有する患者において、それは第1選択として広く用いられるようになるだろう。併用療法使用に向けた流れは、最初のHCV プロテアーゼ、ヘリカーゼインヒビターが利用できるようになればさらに加速するであろう。コストベネフィットを含めた他の要因もHCV 感染症の初期治療オプションとして併用療法のレジメンが支持される理由となる。抗HCV 療法はHIV 治療の足跡を追随しているので、すぐに”早くそして強く”治療する有名な言葉を用いるようになるだろう。

HIV-HCV 重複感染者における抗ウイルス剤の相互作用と副作用
慢性C 型肝炎の治療に勧められているαインターフェロンの投与法は、300-500 万単位を週3 回皮下注であるが、HIV 感染症患者では10-15%にCD4 数の急激な低下をもたらすことがある。この低下は通常治療開始後6-14 週目に起こり、一過性で治療を中止する必要はない。しかし、少数例ではCD4 減少症が非可逆性になることがあり、これは治療を中止しても続くことがある。研究者の中には特異的なHLAアリルを有する場合出現する予測できない副作用とする者もいるが、他の学者では見られないとしている。多くの例で、インターフェロン療法開始後のCD4 減少症は、これらの細胞の破壊が進むよりはむしろリンパ組織と循環している細胞の置換等によると考えられている。しかしCD4 数の低い患者では、内因性のαインターフェロン濃度が上昇し免疫不全を助長しているので、インターフェロンの投与は禁忌であるかも知れない。
HCV 感染症におけるHIV プロテアーゼインヒビターの影響は2 つの方法で調査されている。一つ目は、ウイルスプロテアーゼはそれぞれのウイルス粒子の成熟段階に不可欠なものであるので、HIV とHCV 両方にコードされており、それらの一つに対するインヒビターは、他のものも抑制する可能性である。しかしこれらの薬剤の特異性はいくつかのスタディで証明済みで、いくらHIV プロテアーゼインヒビターが投与後2-3 ヶ月で、HIV 血漿ウイルス量を劇的に減らすことができても、HCV ウイルス量に関しては代用できない。そこで、HCVNS3セリンプロテアーゼにターゲットを絞った特異的な薬剤が、HCV 複製を効果的に抑制するために必要となるであろう。二つ目は、HIV 感染者において、HIVプロテアーゼインヒビターの投与によってもたらされる免疫改善が、HCV 複製に対する抑制的効果を持つ可能性である。残念なことに、HAART 開始後患者のCD4 数が劇的に増加する患者においてもHCVウイルス量は有意には変化しないので、これが起こっている証拠はない。さらにあるスタディでは、HCV ウイルス量や肝酵素の一過性の増加がHAART 開始後認められた。これは急に免疫能が回復し、細胞障害性T 細胞が肝細胞の破壊が増加したためと考えられている。
リバビリンは多くの違ったウイルスの複製を抑制するヌクレオチドアナログである。そのHCV に対する抗ウイルス活性のメカニズムはよく分かっていない。以前のスタディでは、HIV に関しては同様の効果を示さないと言われていた。抗レトロウイルス剤とリバビリンの相互作用に関する文献は散発的である。臨床的には、リバビリンと抗HIV 剤との薬理動態的相互作用は気づかれていない。リバビリンはチトクロームP450 酵素を抑制したり誘導したりする作用を持っていないので、プロテアーゼインヒビターとの併用に関し危険性はないであろう。しかし、試験管レベルでは、相互作用が3 つのメカニズムにて起こる可能性を示唆している。それはリン酸化による影響、酵素活性の交代、細胞質核酸の影響である。リバビリンはin vitro でジドブジンやスタブジンなどのいくつかのヌクレオシドアナログのリン酸化を抑制したり、また逆にジダノシンに対してはリン酸化を促進させる。一方、リバビリンの使用に関して溶血性貧血は主な副作用であるので、骨髄抑制の原因となる他のヌクレオシドアナログと併用する際には注意すべきである。二つの治験があり一つはアメリカで、もう一つはスペインで行われているが、HIV 感染症患者の治療に対し、インターフェロン+リバビリンの安全性と有効性が現在調査されている。これらの疑問点に対し何らかの答えが出ることを期待している。

結論
HIV 感染症患者の生命予後は、新しく高い有効性を持つ薬剤の併用療法導入以来著しく延長した。肝疾患、主に慢性C 型肝炎に続発するものは、静脈内麻薬常用者や輸血歴のある者だけであったが、現在HIV 陽性者における入院や死亡の原因として増加している。HCV 感染症でより早く肝硬変まで進行してしまう経過は、HIV とHCV の重複感染者によく見られる。一方、慢性肝炎患者は抗レトロウイルス剤に暴露されているとその肝毒性が増して投与できなくなり、彼らの生命予後に影響する。αインターフェロンはHIV と重複感染している慢性C型肝炎の15-20%に持続有効性が認められる。しかしCD4 数が低くまたHCVウイルス量が多い患者では、治療に関して有効性に乏しい。HIV とHCV の生物学的類似点はHCV 感染症において併用療法の使用を強く支持する。リバビリンのような新たな薬剤に対して、HIV との重複感染症患者においてその効果や安全性が調査される必要はあるが、最近この使用の機会を得ることができるようになった。

表1 :HIV 感染症患者における慢性C 型肝炎の実態

  • HIV 感染症患者において慢性C 型肝炎は一般的な疾患である。:静脈内麻薬常用者や輸血の既往のある患者では75%以上に発症する。
  • HIV 感染者において慢性C 型肝炎は、その肝疾患の経過を進め、早く肝硬変へ移行する。
  • HIV 感染症患者で、ウイルス性肝疾患による入院や死亡率が増加している。
  • HIV 陽性者の生命予後は、HAART 導入以来劇的に改善したが、抗レトロウイルス剤による肝毒性の出現が、慢性C 型肝炎の患者で多く見られ、それが生存率を規定してしまう。
  • 重症の免疫抑制がない場合、HIV 陽性者と陰性者では慢性C 型肝炎の治療に対する有効性に差はない。

表2: 慢性C 型肝炎に対するインターフェロン療法の有効性に関するHIV 陽性者と陰性者の比較

HIV 陽性
(n=80)
HIV 陰性(n=27) P
初期有効性
(治療開始後3 ヶ月)
38.8% 44.4% 0.602
治療終了時
(治療開始後12 ヶ月)
32.5% 37.0% 0.666
持続有効性
(治療終了後12 ヶ月)
22.5% 25.9% 0.716

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