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薬害肝炎(非加熱製剤)

旧ミドリ十字(現在の田辺三菱製薬、ウルソの製造元)が製造販売していた非加熱製剤の投与によるC型肝炎感染が大きな問題になり、いまでもその薬害に苦しんでいる方々が多くいます。事件の経緯や、裁判の経過などはここでは触れませんが、被告の田辺三菱製薬によるとこの製剤の推定投与数は約29万人で、その結果肝炎に感染した方は1万人を超えるとの見方を示しています。 Read more »

ウルソ

熊の胆

熊の胆

ウルソ(ウルソデオキシコール酸、UDCA)は、ヒト胆汁酸の一成分で和漢薬として古くから知られている熊の胆(右写真)の主成分で、内服投与する医薬品です。利胆作用の他に肝血流増加作用や肝細胞保護作用があると言われています。

1976年に帝京大学第1内科の山中氏らはウルソの慢性肝炎に対する治療効果を二重盲検法により検討し、ウルソがALT(GPT)を有意に(p<0.05)低下させることを明らかにしました。現在では、自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性肝硬変や原発性胆管硬化症でもその有用性が確認され、種々の免疫調整作用も明らかにされています。千葉大学第1内科、東京大学消化器内科のグループでは、C型慢性肝炎にウルソを16週間連日投与して肝機能検査や胆汁酸代謝への効果を調べて、ウルソ投与群では対照群に比べて明らかにALT(GPT)、γ-GTPを低下改善させ、その作用機序として細胞傷害性の強いケノデオキシコール酸と細胞傷害性のないウルソが入れ替わることを明らかにしました。

ウルソ錠

ウルソ錠

ウルソの単独投与による肝発がん抑制についての報告はまだありませんが、強力ミノファーゲンなどとの多剤併用によるC型肝硬変での発がん抑制に効果があることは「C型肝硬変におけるALT(GPT)の年平均値の推移と肝発がんとの関係」の検証を通じて明らかになっています。ウルソ長期間投与でも殆ど副作用はなく、慢性肝炎や肝硬変の炎症の軽度の例では単独投与で、炎症の強い症例では強力ミノファーゲンなどとの多剤併用により、ALT(GPT)値の持続的な改善率を高める効果が期待され、長期的には肝がんの発生抑制につながるものと考えられています。

肝炎の治療

現在、全国の病院で使用されているC型肝炎の治療薬は、

  1. 抗ウイルス薬のインターフェロン
  2. 肝庇護薬(肝保護薬) (→肝庇護療法

の2種類に大きく分けられます。

肝庇護薬はインターフェロンと違い、肝炎ウイルスの持続感染を断ち切るような直接的な効果はなく、免疫調整作用を目的に投与されています。慢性肝炎や肝硬変では患者自体の免疫反応が大きな意味を持っているため、肝庇護療法は肝炎の補助療法として欠かせません。

さらに最近の研究により、肝庇護療法の新しい効果が発見されました。何種類かの肝保護薬を組み合わせてC型肝炎の最も重要な指標のALT(GPT)値を低く保って持続炎症を長期間抑えた場合、慢性肝炎から肝硬変への進展が抑制され、さらに発ガン率の大幅な抑制効果も明らかになったのです。

C型肝炎や慢性肝炎では命を落とすことはありません。しかし治療せずに放っておくと、やがて肝硬変を経て肝臓ガンになってしまいます。現在、国内では肝臓ガンと肝硬変を合わせて年間約4万5000人が死亡していますが、その約8割がC型肝炎からの移行です。

神奈川県立ガンセンターの研究報告によれば、手術を受けたC型の肝硬変や肝臓ガンの患者を3年間にわたり経過観察したところ、ALT(GPT)値が低かったグループではガンの再発率が14%だったのに対し、ALT(GPT)値が高かったグループでは再発率が実に75%にも達したことが分かりました。なお、研究では、ALT(GPT)を下げるために肝庇護薬が使われましたが、どれも単独では効き難いため、数種類の肝庇護薬を併用する方法でALT(GPT)を下げています。

この研究結果により、C型肝炎や肝硬変でもALT(GPT)を低く保てば肝臓ガンが予防できることが明らかになり、肝庇護療法の必要性が改めて認識されるようになりました。

日本でよく知られている肝庇護薬には強力ネオミノファーゲンC(SNMC)ウルソ小柴胡湯などがあります。しかし、これらは単独で使用した場合、ALT(GPT)を低く維持する効果は十分には得られないことが研究により明らかになっています。

ま た、この3種類の肝庇護薬には副作用の問題があり、特に小柴胡湯は間質性肺炎の恐れがあるためにインターフェロンの併用が禁忌という大きな制限がありま す。効果が高く汎用されている強力ネオミノファーゲンは静脈注射による投与であるため、治療を受ける患者の長期にわたる苦痛と負担は避けて通れません。

強力ネオミノファーゲンと同程度の効果を持ちながら経口使用できて、なおかつ副作用の問題がない新しい肝庇護薬が果たしてあるのか? その答えが天然の薬草である垂盆草にありました。