HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

  • 著者:Vincent Soriano, Rafael Rodriguez- Rosado, and Javier Garcia-Samaniego
  • 誌名:AIDS 1999 13:539-546
  • 翻訳:広島大学医学部附属病院 藤井輝久
  • 1999.8.5

はじめに:
開発途上国では人口の2%近くがHCV に罹患している。HCV は慢性肝炎の原因として最も一般的な疾患で、かつ肝移植の主な適応症である。HCV 感染症は急性期を経て80%以上高率に慢性肝炎へ移行し、それから20-40 年後には肝硬変、最後には肝癌へ進行する。
HCV とHIV の重複感染はしばしばみられる。それは両方のウイルスとも同じ感染経路だからである。静脈内麻薬常用者におけるHCV 感染の頻度は75-90%であり、ある血友病患者のグループではほぼ100%である。いくつかの国ではHIV 感染の最大のリスクグループは静脈内麻薬常用者であり、そういった地域では非常に多くのHIVとHCVの重複感染がある。EuroSIDAの統計調査では3048名のHIV 感染症患者のうち約33%がHCV 抗体陽性で、また静脈内麻薬常用者の75%以上が重複感染であった。

HCV とHIV の相互作用:
HIV 感染症の予後が、主にHAART が導入された後有意に改善したことにより、慢性肝疾患が一般的となり、HIV とHCV の重複感染症患者における罹患率や死亡率を決める重要な要因となっている。マドリッドのリファレンスHIV/AIDSインスティテューションにおいて、入院の原因をレトロスペクティブに解析すると、ここ5 年間で1670 例の入院があり、そのうち8.6%が末期の肝疾患であった。HCV 単独、または他の肝好性ウイルスとの重複感染の頻度は88.6%で、肝の合併症が直接死因となったケースが研究期間内で15 例あり、入院中の死亡原因としては全体の4.8%を示した。そして死亡のうち5 例がHIV 感染症患者であった。
HIV 感染症に関連した免疫不全はHCV感染症の経過を進行させるようである。あるスペイン人のグループで、HIV とHCV の重複感染の静脈内麻薬常用者では、15 年後の肝硬変進行例が25%にも及んだ。それに対しHIV陰性の場合では6.5%しか肝硬変に進行しなかった。さらに血友病のグループでHIV とHCV の重複感染がある場合、HCV 単独感染に比べ肝不全への進行例が21 倍にも増加することが分かった。最近、HCV 感染はCD4 数の低下を引き起こしてHIV 感染症を進行させる補助因子であることを示唆している報告がある。
HCV 感染症は、感染した肝細胞を除去する細胞障害性T 細胞や、T 細胞が産生する直接ウイルスの複製を抑制するサイトカインにより制御されている。ウイルス感染に対する免疫反応は、2 つの形で現れる。CD4Th1 細胞が細胞障害性T 細胞(CD8)の反応を活性化するサイトカインを産生し、一方CD4Th2 細胞は、HCV に対する特異的な抗体の産生を誘導する。CD4Th1 サブセットの反応不全が、HCV 感染の慢性化と関係することが示唆されている。この反応不全が細胞障害性T 細胞のHCVを排除することをさらに困難にしているかもしれない。この可能性は、CD4 細胞が数的機能的に不全状態であるHIV感染症患者での、HCV感染症の活動性が高いことを説明しうる。
現在新たな抗レトロウイルス治療薬の使用や、HIV 感染症の最も一般的な治療法としてHAART の使用を組み合わせる抗HIV 治療の最近の変化により、患者は将来に希望を持てるようになった。この臨床上の利益は、ウイルス複製を最大限抑えた結果である。HAART 中の患者で見られる免疫能の回復により、HCV を含む他の多くの病原体に対しても防御できるようになる。

HCV とHIV の類似点:
HIV とHCV はいくつかの共通の生物学的特徴を持つ。両者ともRNA ウイルスで、HCV はフラビウイルス属に属し、HIV はレトロウイルス属に属する。フラビウイルスは一本鎖RNA を持ち、一方レトロウイルスは二本鎖のRNA を持つ。両者のウイルスの生活環にはいくつかの違いがある。HIV-RNA は逆転写酵素によりDNA に転写され、プロウイルスを構築して感染細胞のゲノムに統合される。この統合が非可逆的なHIV 感染症の原因となる。反対に、HCV のゲノムは細胞のゲノムに統合されず、肝細胞の細胞質でウイルスの複製が起こる。この非統合により、HCV を撲滅し感染症を治癒させることはHIV に比べれば容易であることが予想される。
他の両ウイルスの特徴は、それぞれ多種のウイルスゲノムが存在し、多くのジェノタイプ、いわゆる亜型と『マスターシークエンス』近似の遺伝子的多型性を作り出していることである。この遺伝子的多型性はRNAウイルスでは、各々のポリメラーゼ(HIV は逆転写酵素、HCV はRNA ポリメラーゼ)の転写ミスの結果により複製エラーが高率に起こることによって生じる。これらの酵素は、DNA 依存性のDNA ポリメラーゼに比べて、高率にエラー産物を生ずる。逆転写酵素による変異は1×104-5 に1 回の確率で起こり、それはHIV が1 回転写されるごとに1 つの変異を生ずることを意味している。HCV についても同様の数字が挙げられる。このウイルスは一番離れているもの同士で、34%の遺伝子相同性を有する。この遺伝子的多型性はHIV はさらに幅広く、それはウイルスの二つのRNA 鎖の間で、『鎖選択』と呼ばれる現象が起こった後、再び二本鎖となるからであろう。この多型性により、両ウイルスは周囲の状況に順応してより存在しやすいよう進化し、免疫機構や薬物からすり抜けている。両ウイルスが最も変異に富んでいる遺伝子領域は膜蛋白をコードしている領域で、これは免疫機構の圧力があっても、ウイルスを産生できることに関係する。HCV におけるこの部位の多型性は、6 つのジェノタイプに分類され、またいくつかのフェノタイプにも分類されている。同じように、HIV-1 でも3 つの大きなタイプに分類されており、それらはM(main)の10 のサブタイプと、O(outlier)、最近言われ始めたグループN である。
ウイルスの種の分類するのは、ただ単に学問的興味だけでなく、臨床上有用だからである。同じウイルスでもある種では、特定の標的となる細胞を持っていたり、抗ウイルス薬の感受性が違っていたり、同じ感染経路でも感染性が違う。HCV では、サブタイプ1b は全ての他のサブタイプに比べインターフェロン治療の反応性が悪い。さらに、いくつかのサブタイプでは、特定の世代、地域、リスクグループで非常に多いことがある。(例:HCV サブタイプ3 はヨーロッパの静脈内麻薬常用者に多い。)
血中に循環しているウイルス粒子を検出し定量するいくつかの増幅技術により、HIV とHCV 間の他の類似点に関する情報を得ることができる。最近、血中でのウイルス粒子の平均寿命が5 時間以内である点や、驚くべきスピードでウイルスの世代交代が起こっている点など両ウイルスの動態に関して類似点が報告されている。HCV は、1 日に1011-12 産生されると概算されている。さらに以前の指摘と違って、HCV またはHIV 感染者のウイルス量は、ほとんど一定で変化は小さく0.5log 以内である。これにも関わらず、違う患者では有意な差を示す場合がある。HCV 感染症患者でウイルス量が多い者は、HIV 非感染者と比べHIV重複感染者の方が多いことが報告されている。さらにHCVのウイルス量は、CD4細胞数を反映するかのように、HIV 感染症患者では免疫不全のレベルと逆送関する。

なぜHIV 重複感染のある患者のC 型肝炎を治療するのか? :
最近になって、HIV 感染症患者の生命予後に対し肝疾患の関与が明らかになり、HIV 感染症患者でも慢性C型肝炎の治療に関心が向けられるようになった。表1 にこれらの証拠を示す。1997 年9 月のNIH のConsensus Conference でHCV感染症の治療に焦点が当てられ、HIV と重複感染している慢性C 型肝炎の患者では、疾患の進行を早める可能性があることが提起された。それで、HIV 感染症が安定しており、臨床的にも機能的にも安定した状態の患者では、治療を考慮すべきであると考えられた。HCV 治療の一般的なrecommendation によると、それに該当する患者は、55 才未満、持続的にトランスアミラーゼが高値(正常の1.5 倍以上)、血中でのHCV 検出、肝生検で活動性があるものである。
ここ2 年間HIV 感染症治療としてHAART の利用が広まるとともに、肝毒性の報告件数も増加している。我々の最近のスタディでは、HAART 開始後14%近くの患者で肝毒性を来している。肝毒性の頻度は他のリスクグループに比べ、静脈内麻薬常用者の方が高く、これは、このリスクグループではHCV 感染症の頻度が高いことが直接関係している。それでC 型慢性肝炎は、肝毒性を惹起する因子の一つであり、HAART 以前のHIV 感染症患者においても、HCV 感染症の治療には重大な支障があった。

α インターフェロン治療
αインターフェロンは最近になるまで、慢性C型肝炎の治療として唯一認められていた治療であった。HIV 非感染者における持続有効率は21%であり、その率はインターフェロンの投与量依存性に上昇する。HIV 感染者においてもその有効性はほぼ同等であるが(表2)、CD4 細胞数が少ないほどその率は低下する。さらに、HIV 感染症患者で持続有効性を示すものは、免疫不全が進行するにも関わらず、長期間の観察でもHIV 陰性者に比べ再燃することが少ない。このことは、これらの患者ではHCV 感染症を根治できたことを示す。
肝の線維化や肝構築組織の破壊の状態は予後判定のマーカーとなり、またインターフェロンの有効性と密接に関係する。最近のスタディでは、HCV とHIVの重複感染の患者は、HIV 陰性者に比べ線維化や組織の破壊の程度がひどく、治療に反応しにくいことが報告されている。
持続有効率とインターフェロンの総輸注量との関連性について、慢性C 型肝炎の治療として現在一般に使用されている量が至適量とは言えないようである。事実、血中からウイルスを消失させるのに、インターフェロンの高用量が勧められ、投与間隔が短いほど長期間持続させる事ができる。現在行われているいくつかのスタディでは、最初の1-2 週間高用量で投与間隔を短くしてインターフェロンを輸注し、その後維持量とする’導入-維持’レジメンの評価が行われている。
研究段階であるが、高用量で投与間隔の短いインターフェロン療法や、ポリエチレングリコールと共有結合させたインターフェロンの登場の必要性が高まっている。このポリエチレン化インターフェロンは、共有結合が徐々にとれて、インターフェロンをゆっくり放出させる。さらに、インターフェロン濃度を持続的に保つことで、ウイルス抑制により有効となる。この形のインターフェロンの他の重大な利点は、長期間治療が必要な際に問題となる投与方法が簡単であることが挙げられる。長期間インターフェロンを続けることが持続的有効性を高めることに繋がるのは既に証明されている。

HCV 感染症に対する新薬との併用療法
HCV とHIV に共通するウイルス学的特徴が知られるようになってから、HIVの分野において学んだ経験から、HCV 感染症の治療に対し新たな試みがされるようになった。αインターフェロンの単回投与により、24 時間以内にHCV ウイルス血症を抑制することができるが、これはHIV ウイルス血症がHAART により抑制されるよりも有意に早く、このことよりHCV 感染症のウイルス動態はHIV よりも早いことがわかる。αインターフェロンのような1 種類の薬剤の投与によるウイルスの選択的抑制では、ウイルスの寿命が短く高率に変異を起こす点を考えると、薬剤耐性株を容易に作りウイルス学的治療失敗に繋がる。このことは、HIV 感染症においては既に証明されており、現在の抗レトロウイルス療法の治療ガイドラインにある多剤併用療法の使用を推奨する根拠となっているが、HCV 患者において治療失敗例が、HCV変異株によるインターフェロン耐性が原因であるといった根拠はない。しかしHCV ジェノタイプ1b の患者におけるインターフェロンに対する反応性の悪さは、インターフェロン感受性決定部位(Interferon-sensitivity determination region: ISDR)が存在するNS5A 遺伝子の特徴的シークエンスと関係している。HCV 感染症のこの特徴は、HIV-2 やHIV-1 グループO における非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対する耐性獲得の機序に類似しており、そのためそれらのタイプでは、HIV-1 グループM とは違い、それらの薬剤に対し自然耐性を持つ株の出現が見られる。
HCV に対する武器は、近年有意に増えている。他の疾患で使用されていた抗ウイルス剤のリバビリン、アマンダジンとインターフェロンの併用療法を慢性C型肝炎の患者に使用することにより、持続有効率がリバビリンの場合50%近くに上昇した。現在HIV 感染者におけるHCV 感染症の治療に、この併用療法を用いた臨床研究が2 つ行われている。リバビリンは広い抗ウイルススペクトラムを有する合成ヌクレオシド系薬剤である。アメリカでは、その薬剤は小児の呼吸器のウイルス感染症の治療のためのエアロゾールタイプが最初に承認された。いくつかのスタディにより、この薬剤のHCV に対する確かな有効性が証明された。この薬剤は慢性C型肝炎の治療に単剤として使用した場合、血清ALTは下がるが、持続的有効性はほとんどない。このためリバビリンはC型肝炎に対し単剤投与では承認されず、ほとんど常にインターフェロンとの併用療法で用いられる。最近まで、慢性C型肝炎の治療としてのインターフェロンとリバビリンの併用療法は、再燃例やインターフェロン不応例のみにしか認められておらず、第2 選択であった。しかし最近、我々の第1 選択はこの併用療法であり、インターフェロン単独療法よりも高い持続有効率を示すため、標準的方法となりつつある。最も重要な副作用は、可能性としては低いが、リバビリンによる溶血性貧血であるが、それ以外はインターフェロン単独療法と同程度の発生率であった。
他の抗ウイルス剤では、未だに抗ウイルスメカニズムが明らかになっていないが、インフルエンザの治療や予防に認可されているアマンダジンもHCV に対し有効性を示している。アマンダジンとαインターフェロン併用療法にて高い有効性(投与後3ヶ月におけるHCV のクリアランス)を示したといういくつかの報告がある。アマンダジンはαインターフェロンに比べ廉価(アマンダジン30 ドル/月、αインターフェロン500 ドル/月)で、内服投与(100mg を1 日2回)でしかも非常に飲みやすい。現在αインターフェロンとリバビリンまたはアマンダジン療法を用いたHCV に対する2 剤、3 剤併用療法の有効性と安全性を検討する研究が進められている。現在まで、HCV の治療に対しアマンダジンはFDA の認可を受けていない。新しい抗HCV 剤の初期使用や併用療法を盛り込んだスタディにより、2、3 年前に抗レトロウイルス療法により起こった出来事の再現になるであろう。
HCV 撲滅のために、新しい薬剤の併用や新しい治療戦略など多大な努力がされているにもかかわらず、標準的なインターフェロン療法やインターフェロンとリバビリンの併用療法に有効を示す慢性C 型肝炎患者は半分にも満たない。だからこそ新しい薬理学的オプションを持つ薬剤や治療戦略が必要である。インターフェロンは、HCV のウイルス動態をもっと効率よく抑制するよう、もっと有効的に使用することにより、持続有効率を上げることができるかも知れない。それには、HIV 感染症の治療で既に用いられている段階であるが、HCV 蛋白の分子構造の理解に裏付けされた特異的な抗ウイルス剤の開発を行うなど、HCV 感染症の治療に向けてもっとウイルス学的アプローチが必要となるであろう。プロテアーゼやヘリカーゼインヒビター等のいくつかの新しい薬剤が現在研究中であるが、これらはウイルスの複製を抑制し急性HCV 感染症の予防に対する有効性が期待されている。HCV プロテアーゼやヘリカーゼの構造は既に報告されているが、これらのインヒビターの効果を調べるための適当な培養細胞や動物モデルがないことが、新たな併用療法の開発に対し大きな障害となっている。HCV 感染症の治療のための他の分子学的なアプローチとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボゾームの使用を含めた研究が進行している。アンチセンスはHCV ゲノムからのHCV 蛋白転写を抑制し、一方リボゾームはウイルスRNA を含めRNA を選択的に分解する。最近CMV 網膜症の治療にアンチセンス薬剤のformivirsen がFDA で初めて承認されたことにより、HCV を含めた他のウイルスに対し同様の効果を有するかどうかの研究に拍車をかけるであろう。
HIV の分野では、現在併用療法が標準で、単剤や2 剤併用療法はもはや推奨されていない。さらに、重症の免疫不全のある患者では初期には併用療法を用いず少し待っていたが、現在では全ての患者にできるだけ早く治療を開始することが当然となっている。HCV 感染症に関しては、終末期の肝疾患(肝硬変)になる前に治療することが強く推奨されている。HIV の例では血漿ウイルス量と薬剤有効性の関係はまだ完全に確定されていないが、HCV ではベースラインの血漿ウイルス量は治療の有効性に直接関係してくる。HCV ウイルス量の高い患者では、インターフェロン単独療法の持続有効性は7%に満たない。現在までは、併用療法は治療不応性やインターフェロン療法後再燃した患者に限られているが、特に高いHCV-RNA レベルを有する患者において、それは第1選択として広く用いられるようになるだろう。併用療法使用に向けた流れは、最初のHCV プロテアーゼ、ヘリカーゼインヒビターが利用できるようになればさらに加速するであろう。コストベネフィットを含めた他の要因もHCV 感染症の初期治療オプションとして併用療法のレジメンが支持される理由となる。抗HCV 療法はHIV 治療の足跡を追随しているので、すぐに”早くそして強く”治療する有名な言葉を用いるようになるだろう。

HIV-HCV 重複感染者における抗ウイルス剤の相互作用と副作用
慢性C 型肝炎の治療に勧められているαインターフェロンの投与法は、300-500 万単位を週3 回皮下注であるが、HIV 感染症患者では10-15%にCD4 数の急激な低下をもたらすことがある。この低下は通常治療開始後6-14 週目に起こり、一過性で治療を中止する必要はない。しかし、少数例ではCD4 減少症が非可逆性になることがあり、これは治療を中止しても続くことがある。研究者の中には特異的なHLAアリルを有する場合出現する予測できない副作用とする者もいるが、他の学者では見られないとしている。多くの例で、インターフェロン療法開始後のCD4 減少症は、これらの細胞の破壊が進むよりはむしろリンパ組織と循環している細胞の置換等によると考えられている。しかしCD4 数の低い患者では、内因性のαインターフェロン濃度が上昇し免疫不全を助長しているので、インターフェロンの投与は禁忌であるかも知れない。
HCV 感染症におけるHIV プロテアーゼインヒビターの影響は2 つの方法で調査されている。一つ目は、ウイルスプロテアーゼはそれぞれのウイルス粒子の成熟段階に不可欠なものであるので、HIV とHCV 両方にコードされており、それらの一つに対するインヒビターは、他のものも抑制する可能性である。しかしこれらの薬剤の特異性はいくつかのスタディで証明済みで、いくらHIV プロテアーゼインヒビターが投与後2-3 ヶ月で、HIV 血漿ウイルス量を劇的に減らすことができても、HCV ウイルス量に関しては代用できない。そこで、HCVNS3セリンプロテアーゼにターゲットを絞った特異的な薬剤が、HCV 複製を効果的に抑制するために必要となるであろう。二つ目は、HIV 感染者において、HIVプロテアーゼインヒビターの投与によってもたらされる免疫改善が、HCV 複製に対する抑制的効果を持つ可能性である。残念なことに、HAART 開始後患者のCD4 数が劇的に増加する患者においてもHCVウイルス量は有意には変化しないので、これが起こっている証拠はない。さらにあるスタディでは、HCV ウイルス量や肝酵素の一過性の増加がHAART 開始後認められた。これは急に免疫能が回復し、細胞障害性T 細胞が肝細胞の破壊が増加したためと考えられている。
リバビリンは多くの違ったウイルスの複製を抑制するヌクレオチドアナログである。そのHCV に対する抗ウイルス活性のメカニズムはよく分かっていない。以前のスタディでは、HIV に関しては同様の効果を示さないと言われていた。抗レトロウイルス剤とリバビリンの相互作用に関する文献は散発的である。臨床的には、リバビリンと抗HIV 剤との薬理動態的相互作用は気づかれていない。リバビリンはチトクロームP450 酵素を抑制したり誘導したりする作用を持っていないので、プロテアーゼインヒビターとの併用に関し危険性はないであろう。しかし、試験管レベルでは、相互作用が3 つのメカニズムにて起こる可能性を示唆している。それはリン酸化による影響、酵素活性の交代、細胞質核酸の影響である。リバビリンはin vitro でジドブジンやスタブジンなどのいくつかのヌクレオシドアナログのリン酸化を抑制したり、また逆にジダノシンに対してはリン酸化を促進させる。一方、リバビリンの使用に関して溶血性貧血は主な副作用であるので、骨髄抑制の原因となる他のヌクレオシドアナログと併用する際には注意すべきである。二つの治験があり一つはアメリカで、もう一つはスペインで行われているが、HIV 感染症患者の治療に対し、インターフェロン+リバビリンの安全性と有効性が現在調査されている。これらの疑問点に対し何らかの答えが出ることを期待している。

結論
HIV 感染症患者の生命予後は、新しく高い有効性を持つ薬剤の併用療法導入以来著しく延長した。肝疾患、主に慢性C 型肝炎に続発するものは、静脈内麻薬常用者や輸血歴のある者だけであったが、現在HIV 陽性者における入院や死亡の原因として増加している。HCV 感染症でより早く肝硬変まで進行してしまう経過は、HIV とHCV の重複感染者によく見られる。一方、慢性肝炎患者は抗レトロウイルス剤に暴露されているとその肝毒性が増して投与できなくなり、彼らの生命予後に影響する。αインターフェロンはHIV と重複感染している慢性C型肝炎の15-20%に持続有効性が認められる。しかしCD4 数が低くまたHCVウイルス量が多い患者では、治療に関して有効性に乏しい。HIV とHCV の生物学的類似点はHCV 感染症において併用療法の使用を強く支持する。リバビリンのような新たな薬剤に対して、HIV との重複感染症患者においてその効果や安全性が調査される必要はあるが、最近この使用の機会を得ることができるようになった。

表1 :HIV 感染症患者における慢性C 型肝炎の実態

  • HIV 感染症患者において慢性C 型肝炎は一般的な疾患である。:静脈内麻薬常用者や輸血の既往のある患者では75%以上に発症する。
  • HIV 感染者において慢性C 型肝炎は、その肝疾患の経過を進め、早く肝硬変へ移行する。
  • HIV 感染症患者で、ウイルス性肝疾患による入院や死亡率が増加している。
  • HIV 陽性者の生命予後は、HAART 導入以来劇的に改善したが、抗レトロウイルス剤による肝毒性の出現が、慢性C 型肝炎の患者で多く見られ、それが生存率を規定してしまう。
  • 重症の免疫抑制がない場合、HIV 陽性者と陰性者では慢性C 型肝炎の治療に対する有効性に差はない。

表2: 慢性C 型肝炎に対するインターフェロン療法の有効性に関するHIV 陽性者と陰性者の比較

HIV 陽性
(n=80)
HIV 陰性(n=27) P
初期有効性
(治療開始後3 ヶ月)
38.8% 44.4% 0.602
治療終了時
(治療開始後12 ヶ月)
32.5% 37.0% 0.666
持続有効性
(治療終了後12 ヶ月)
22.5% 25.9% 0.716

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