Category Archives: 4. 肝炎の治療

ウコン

ウコンは、インド原産の亜熱帯植物で、ショウガ科クルクマ属の多年草です。春から夏にかけて成長し、秋には美しい白色の花を咲かせます。薬用に用いられるのは主として根茎の部分。伝承医学の分野では古くから優れた薬効が認められ、特に沖縄では琉球王朝の時代から肝臓の解毒作用を高める強肝薬や健胃薬として珍重されてきました。

さまざまな現代病や、糖尿病など生活習慣病の予防にも効果があることが解明されてきているのは、ストレスの多い社会に生きているからこそ、有史以来人々が体験的に求めてきた癒しの力が現代科学によって認められたものと言えるのかもしれません。南国の太陽と肥沃な土壌が育んだ大自然のパワーが自然治癒力を高めて、体質そのものを改善しながら病気に立ち向かう。ウコンは抗酸作用と解毒作用の画面から、わたしたちの健康を守ってくれます。

  • 強肝作用…肝汁の分泌を促し、肝臓の働きを助けて有害物質を排出。肝臓機能障害の予防と治療に効果を発揮する
  • 抗酸化作用…ビタミンEなどに匹敵する強力な抗酸化作用で免疫力を高める
  • 活性酸素除去…お酒やタバコの害、ストレス、紫外線や大気汚染などが原因で発生する活性酸素を除去し、さまざまな病気を予防する
  • 健胃作用…胃の働きを整え、胃炎や十二指腸潰瘍を改善する
  • 血液の浄化…血液中のコレステロールや中性脂肪を溶かして血行を促進。血管壁を強くして、動脈硬化や心筋梗塞を予防する。またインスリン抵抗性を改善して、糖尿病の発症や進行を抑える
  • 抗菌・抗炎症作用…カラダの抵抗力を強くして、病気感染を防ぐ
  • 肥満防止…脂肪分解酵素の働きを高め、中性脂肪の沈着を防いで肥満を防止する
  • 美肌作用…シミ・シワを防ぎ、カラダの中から健やかな美肌をつくる

ウコンの幅広い薬理作用の中でも、これまで注目されてきたのがガンに対する効果でした。その火付け役となったのは、1991年アメリカで行われた皮膚ガンの動物実験で、ニュージャージー州ラトガース大学の研究グループが発ガン物質を塗ったマウスの皮膚にウコンの黄色い色素成分クルクミンを塗布したところ、ガンの発生が大幅に抑えられたと発表したのです。ところが、このガンに対する効果に異を唱える学説も出てきています。というのも、ガンに対して効果が働くのと同時に、ガンを抑える仕組み自体も阻害されているというものです。頑張ってもらわなければいけない機能も抑えこんでしまうとあって、以来、世界各国の研究機関がウコンを使って研究を重ねていますが、いまだ解明しきれていないのが実情です。

しかも、もう一つ重要な注意点があります。C型肝炎NASHなどの場合、ウコンを取ることで鉄過剰になってしまい、よかれと思って摂取していたのにかえって炎症を促進させることがあります。ウコンが肝臓にいい!という受け売りで安易に手を出すのは、もともと鉄過剰の肝炎患者にはとても危険です。重篤な症状に陥った例も少なくありません。

肝臓に問題のない人が肝機能を高めるためにウコンを摂るのは、よいかもしれません。テレビCMもそれが前提だと思います。だからこそ、それでもウコンを摂る際には、どのくらい鉄分を含んでいるかよく確認し、確認ができないものには決して手を出さないのがベストだといえます。

垂盆草

垂盆草は昔からアジアの民間に広く浸透してきた薬草です。

特に中国では30年前から始まった国家的プロジェクトによる垂盆草研究の結果、ALT(GPT)AST(GOT)といった数値を改善する作用に優れた有効成分サルメントシンが発見されました。そして現在では肝臓の治療薬として中国全土で広く使われるようになっています。サルメントシンは肝機能の数値低下作用に非常に優れているため、特に急性・慢性肝炎患者の肝臓の状態を改善することに最大の効果を発揮します。1~2か月間使用すれば、約7割の患者のALT(GPT)、AST(GOT)が改善され、続けて飲めばその他の肝機能も改善して肝炎を沈静化させます。

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垂盆草の効能と主治

垂盆草の効能と主治

(一)垂盆草(日本名:ツルマンネングサ) Sedum sarmentosum Bunge

ベンケイソウ科多年生肉質草本植物の垂盆草の新鮮で乾燥させた全草である。

  • 【別名】
    (中国名)狗牙草、石甲草、三叶佛甲草、地蜈蚣草
  • 【植物形態】
    多年生肉質草本で、茎は地上を匍匐しており、種子が盆の中についた場合に長い茎が盆を沿って垂れ下がることから垂盆草と名づけられた。根が生え易く、高さは10~20cm程度、葉は輪生し、肉質で針を逆にした形もしくは矩円形である。長さは1.5~2.5cm、幅3~6mm、先端は尖っており、基部に矩がある。花弁は5枚で、淡い黄色で、頂点は短く尖っている。おしべは10本あり、比較的花弁は短い。鱗片は小さく四角形である。心皮は5つで若干開いている。果実は5つである。花期は4-5月で、果実の実る時期は6-7月である。
  • 【生態分布】
    山部崖の岩石地帯、狭隘部、道端、川岸に植生する。また栽培専門家もいる。中国東北地方、河北、河南、江蘇、安徽、浙江、江西、湖北、四川省など各省に植生している。主産地は浙江、江蘇及び安徽省である。
  • 【薬用部位】
    全草、異物を除去して、日干しにするか新鮮な物を使用する。夏秋季に摘採する。
  • 【成分、薬理研究】
    成分:垂盆草内に主として含有されているのは垂盆草配糖体sarmentosineである。Glc-O-CH2CH=C(CH2OH)CN 垂盆草配糖体この他にアミノ酸、フラボン、トリテルペノイド及びステロール等である。アミノ酸は主にアスパラギナーゼ(L-aspargine)、アスパラギン酸(L-aspartic)、アラニン(L-α-alanine)、ロイシン(L-leucine)、チロシン(L-tyrosine)、バリン(L-valine)などを含有する。

[薬理研究]

  1. 肝臓保護、酵素抑制作用
    動物実験により垂盆草には肝臓保護作用があることが証明された。実験動物のALT、γ-グロブリン値及び肝臓の腺維化は明らかに低下、抑制され、酵素抑制成分は垂盆草生薬及び乾燥させた全草の水溶部分に存在している。希釈アルコール抽出物の水溶部分の主な成分は垂盆草配糖体である(構造式は上記参照)。その他の研究では四塩化炭素中毒になる前に、事前にラットがフェノバルビタールナトリウムによって引き起こされた急性黄疸型肝炎にたいして、垂盆草は顕著な治療効果を現した。例としては対照グループラットの血清中のビリルビンは1.6mg/dlであったが、垂盆草グループはわずかに0.5mg/dlであった。垂盆草は持続して用い6週間以上治療したところ、病理学観察において肝細胞の炎症性浸出物は明らかに消失し、門脈域の炎症性細胞の浸潤も消失し、壊死巣も減少した。このことにより垂盆草配糖体の酵素抑制作用の主用なものとしては細胞の損傷を改善させることによって得られるものであることが証明された。異なる種類の動物の肝細胞膜抽出物を抗原として、マウスの免疫性肝炎病理変化を作り出し、2、5、9週目と区切ってマウスの血清と肝臓抗原を取って免疫を対流させて電気泳動をおこない、同時に肝細胞切片をとってクッペル細胞の増加、門脈域の中性及び単核細胞の浸潤について観察したところ、肝細胞の点状壊死等の状況から見て、垂盆草には免疫性肝炎に対しては治療作用がないことが証明された。
  2. 免疫抑制
    ラット、マウスの免疫実験中に、垂盆草配糖体の薬剤量が500mg/kgまで増加した場合、実験動物に対して顕著な抑制作用が見られた。またマウスの胸腺細胞を減少させたため対照グループの62%に止まった。ラット移植片対宿主反応を抑制する反応の実験中に、ラットの脾臓細胞リンパ節の増加指数は対照グループよりも低く、その抑制率は74%であった。この他にマウスの脾臓プラクを形成する細胞を抑制させたが、これは健全なマウスの42-46%にすぎなかった。以上、これらの実験により体液免疫にも抑制作用があることが証明された。垂盆草配糖体は動物実験を通して生体細胞免疫に対して顕著な抑制作用が証明された。また、胸腺細胞数を減少させて、T細胞の介在による移植片対宿主反応やT細胞依存による抗原-SRBCの抗体形成細胞を抑制する。副作用も小さく、毒性も低い。この他に垂盆草を服用した後のリンパ細胞の転化率及びマクロファージ機能を明らかに低下させる効能があり、有効に細胞免疫反応を抑制させることによって、肝細胞の損傷を減少させることによってALT値を低下させた。大部分の患者はALT値の低下に伴い、臨床症状も改善または治癒し、細胞免疫指標も明らかに低下したが、一部の患者の指標は元々低く、服薬後にALT値が減少し臨床症状も改善したが、逆に細胞免疫指標は上昇してしまった。しかしながら、これはひとつの将来性のある免疫抑制剤であると考えられる。調査により本製品は8-9月に採取すると、有効成分の含有量が最高であり、品種は江蘇、山東、浙江麗水や桐盧一帯の産地のものが良好なものとされている。その中でもミツバベンケイソウ(Sedum vertcillatum)の含有量が高く、錠剤製造の原料として使用することができる。

[主治と効能]

中医では、垂盆草には解熱解毒及び鎮痛、腫瘍消失、黄疸消失、湿邪排除作用があり、湿熱、黄疸、小便不調時に使用する。

効能

主治

解熱・解毒

癰疽・腫瘍、毒蛇の咬み傷、火傷、咽喉腫れ

湿邪の排除、黄疸の消失

湿熱、黄疸

酵素抑制

各タイプALT、AST値が上昇している肝炎

垂盆草の各種薬剤は肝炎治療に使用されてから30年が経過した。臨床では各タイプの肝炎に対して割合良好な酵素抑制作用を示した。垂盆草単品の各種薬剤の治療効果は70.4~74.4%の間である。例としてはその他の関連する薬物による“復方垂盆草”の場合は、酵素抑制作用は82-93%にまで上昇し、これは五味子製剤(84.2%)やBifendate(91.1%)の治療効果と相似していることが証明された。治療効果が高く、毒性が低いことから現在までに各型の肝炎治療に対して広範囲で使用されている。

楊金龍等はアシクロビルと垂盆草を使用してB型肝炎治療に関して比較を行った。アシクロビル750mgと塩化ナトリウム500mgを調合して毎日1回静脈注射したところ、1ヶ月経過後に慢性B型肝炎が治療できた患者は31例だったのに対し、垂盆草10gを経口服薬したところ、1ヶ月経過後には20例治療できたということで比較をした。治療グループは症状が改善された。例としては脱力感、集中力の欠乏、腹部の腫れ、肝臓の痛み、ALT上昇等の総有効率はそれぞれ94%、95%、80%、100%、79%であった。一方、垂盆草グループはそれぞれ89%、1%、3%、100%、70%であった。両グループ差には特に顕著な意義はなかった(P>0.05)。治療グループのHBeAgが陰性に改善したのは14/31であり、対照グループは無効であった。

劉翔等は垂盆草を使用して頸部の痛みを持つ患者50例を治療した。局部に垂盆草を敷いて15分経過時に、赤腫れ、腫れ痛が緩和した患者は37例あり、15~30分間の間に緩和した患者は13例であった。また、3日間で治癒した患者は7例、4日間治癒は12例、5日間治癒は31例であった。つまり5日以内に全て治癒させることができるのである。これは一種の簡単で、経済的にも有効な治療法である。

蘭義明は垂盆草を敷くことによって帯状の疱疹をもつ患者50例を治療したところ、治癒39例、好転10例、無効1例で、総有効率は98%であった。最短の薬剤使用日数は3日、最高は7日であった。

注意:筆者は肝寿峰を使用して5例のB型肝炎患者及び1例の慢性B型肝炎の治療を行ったが、共に良好な成果が得られた。詳細は下記の表を参照。

1.肝寿峰による5例のB型肝炎を治療した(下の表を参照)。

肝寿峰による5例B型肝炎の治療結果

番号

年齢

性別

診断

ALT

治療前

治療後

1ヶ月

2ヶ月

3ヶ月

4ヶ月

5ヶ月

1

41

男性

慢性B型肝炎(軽度)

280U/L

240

220

240

260

220

2

53

男性

慢性B型肝炎(軽度)

200U/L

220

180

200

3

31

男性

B型肝硬変(食道静脈破裂出血歴)

96U/L

42

38

32

26

26

4

34

男性

B型肝硬変(腹水歴)

84U/L

64

28

38

40

24

5

52

男性

アルコール性肝硬変非代償

1668U/L

240

80

40

28

26

3例の肝硬変の治療効果は良好であるが、2例の慢性B型肝炎に対しては無効であった。

2、慢性B型肝炎(軽度):

ウイルス抑制及び酵素抑制を共に採用して治療を行ったところ、良好な成果を得た。

男性、45歳。慢性B型肝炎が発病して10数年になるが、2000年3月よりALT、ASTの上昇が見られた(ALT:240U/L、AST:150U/L)。ウイルスマーカーはHBsAg+、HBeAg+、抗-HBc+を示した。またHBV DNA100Pg%で、他の項目は正常であった。以前より多種の肝臓病治療薬を使用して治療してきたが効果がなく、2000年6月14日より共同治療を行った。即ち、インターフェロン、fanciclovir、チモシン、復方垂盆草カプセルを使用して治療を行った。インターフェロンab(商品名:賽諾金)500万U、毎日1回皮膚注射を行う。30回行った後500万U投与すること。一日おきに皮膚注射する。治療期間は合計で9ヶ月である。Fanciclovirは1回につき500mg投与する。1日3回で治療期間は合計6ヶ月である。復方垂盆草カプセル(肝炎霊4号)1回につき4粒服用する。1日3回、治療期間は合計で6ヶ月間続ける。

投薬から3ヶ月経過後にALT、AST値は正常値にまで低下し、HBsAg、HBeAgは陰性、抗-HBcも陽性に変化した。またHBV DNAは10Pg%にまで低下した。9ヶ月目を迎えるとALT、AST値は一貫して正常値を保ち、抗-HBcは陽性、HBV DNAは陰性状態を持続した。2001年12月25日にB型肝炎ウイルスマーカーを再検査したところ、抗-HBS+、抗-HBe+、抗-HBc+のウイルスマーカーが出現しており、HBV DNA陰性の状態を示し、ALT、AST値は正常値を保持した。2002年6月6日までに再度検査を行った際も上述した結果を保持しており、患者は全快していた。

[用法と使用量]

  1. 生薬:
    (1)乾燥した垂盆草:毎回10-50gを煎じて服用する、一日3回。
    (2)新鮮な垂盆草 :毎回50-250g煎じて服用する、一日3回。または垂盆草錠剤、垂盆草シロップを作っても良い。
  2. 垂盆草沖服剤:沖服剤中には1袋につき垂盆草配糖体24mg含有されている。毎回1-2袋服用する。一日3回。
  3. 復方垂盆草カプセル:
    垂盆草、ウツボグサ、山豆根など多種の漢方薬を精製して作られたものである。カプセル1粒につき抽出物250mg含有している。毎回4-6粒のカプセルを服用する。一日に3回服用。

[注意事項]

垂盆草のALT抑制作用は有効なもので、各型の肝炎の中でも多くはALTが低下した後に、患者の肝臓病の各種症状も改善、回復するが、但し肝細胞損傷は異なる程度に応じて回復する。そのため多くの患者、特に慢性肝炎患者は服薬停止後まもなくしてから再びALTが上昇する。そのため垂盆草は臨床応用時に、その他の酵素抑制剤と同様に、比較的長い時間応用することによって治療効果が安定する。筆者の経験に基づくと、薬はALTが正常値まで低下するまで使用し、同等の薬剤量を少なくとも半年以上使用して徐々に量を減らしていき、1年以上持続して服薬停止すると再発率は最低値にまで低下する。垂盆草の毒性は非常に低いが、服薬後に胃部に違和感を感じる患者もいる。しかし、量を減らすか元の使用量を1日に4、5回に分ければ消失する。

参考文献

  1. 上海延安制药厂,肝炎新药-复方垂盆草糖浆,医药工业 1973;(1);59
  2. 杭州中药一厂,垂盆草片,中草药通讯 1973;(4);13
  3. 上海市中医研究所,等,应用垂盆草治疗急性和慢性活动型肝炎1000例的初步报告-对谷丙转氨酶活力检测情况的观察,医学情报交流 1973;(7);27
  4. 上海卢湾区中心医院内科,复方垂盆草糖浆对慢性肝炎和迁延性肝炎的疗效观察,新医学1974;(7);27
  5. 上海市中医研究所内科,垂盆草治疗活动性肝炎1000例疗效观察;医学研究通讯 1975;(2);34
  6. 吴光景 垂盆草有效成分的初步研究,芜湖医药 1978;(2);64
  7. 方圣鼎,等,有效成分垂盆草甙的分离与结构,科学通报 1979;(9);431
  8. 翟世康,等,垂盆草甙免疫抑制作用的研究,中华微生物与免疫学杂志 1982;(3);145
  9. 方圣鼎,等,垂盆草化学成分的研究Ⅳ,垂盆草甙及垂盆草甙的结构,化学学报 1982;(3);273
  10. 郭佳,等,垂盆草降谷丙转氨酶的机理探讨,上海中医杂志 1991;(4);47
  11. 韩絮琳,等,肝复灵4号治疗病毒性肝炎的疗效观察,第二军医大学学报 1999;20(8);586
  12. 中华微生物和免疫学杂志 1982;1(3);145
  13. 李静芳等,药学画报 1981;16(5);269
  14. 杨金龙等,阿昔洛韦与垂盆草治疗乙型肝炎的比较,新药与临床,1994;13(3);175
  15. 刘翔等,垂盆草治疗颈痛50例,中国中西结合外科杂志 2001;7(2);120
  16. 兰义明等,垂盆草外敷治疗疱疹,福建中医药 1999;30(4);46

HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

HIV 感染症患者における慢性C型肝炎の治療

  • 著者:Vincent Soriano, Rafael Rodriguez- Rosado, and Javier Garcia-Samaniego
  • 誌名:AIDS 1999 13:539-546
  • 翻訳:広島大学医学部附属病院 藤井輝久
  • 1999.8.5

はじめに:
開発途上国では人口の2%近くがHCV に罹患している。HCV は慢性肝炎の原因として最も一般的な疾患で、かつ肝移植の主な適応症である。HCV 感染症は急性期を経て80%以上高率に慢性肝炎へ移行し、それから20-40 年後には肝硬変、最後には肝癌へ進行する。
HCV とHIV の重複感染はしばしばみられる。それは両方のウイルスとも同じ感染経路だからである。静脈内麻薬常用者におけるHCV 感染の頻度は75-90%であり、ある血友病患者のグループではほぼ100%である。いくつかの国ではHIV 感染の最大のリスクグループは静脈内麻薬常用者であり、そういった地域では非常に多くのHIVとHCVの重複感染がある。EuroSIDAの統計調査では3048名のHIV 感染症患者のうち約33%がHCV 抗体陽性で、また静脈内麻薬常用者の75%以上が重複感染であった。

HCV とHIV の相互作用:
HIV 感染症の予後が、主にHAART が導入された後有意に改善したことにより、慢性肝疾患が一般的となり、HIV とHCV の重複感染症患者における罹患率や死亡率を決める重要な要因となっている。マドリッドのリファレンスHIV/AIDSインスティテューションにおいて、入院の原因をレトロスペクティブに解析すると、ここ5 年間で1670 例の入院があり、そのうち8.6%が末期の肝疾患であった。HCV 単独、または他の肝好性ウイルスとの重複感染の頻度は88.6%で、肝の合併症が直接死因となったケースが研究期間内で15 例あり、入院中の死亡原因としては全体の4.8%を示した。そして死亡のうち5 例がHIV 感染症患者であった。
HIV 感染症に関連した免疫不全はHCV感染症の経過を進行させるようである。あるスペイン人のグループで、HIV とHCV の重複感染の静脈内麻薬常用者では、15 年後の肝硬変進行例が25%にも及んだ。それに対しHIV陰性の場合では6.5%しか肝硬変に進行しなかった。さらに血友病のグループでHIV とHCV の重複感染がある場合、HCV 単独感染に比べ肝不全への進行例が21 倍にも増加することが分かった。最近、HCV 感染はCD4 数の低下を引き起こしてHIV 感染症を進行させる補助因子であることを示唆している報告がある。
HCV 感染症は、感染した肝細胞を除去する細胞障害性T 細胞や、T 細胞が産生する直接ウイルスの複製を抑制するサイトカインにより制御されている。ウイルス感染に対する免疫反応は、2 つの形で現れる。CD4Th1 細胞が細胞障害性T 細胞(CD8)の反応を活性化するサイトカインを産生し、一方CD4Th2 細胞は、HCV に対する特異的な抗体の産生を誘導する。CD4Th1 サブセットの反応不全が、HCV 感染の慢性化と関係することが示唆されている。この反応不全が細胞障害性T 細胞のHCVを排除することをさらに困難にしているかもしれない。この可能性は、CD4 細胞が数的機能的に不全状態であるHIV感染症患者での、HCV感染症の活動性が高いことを説明しうる。
現在新たな抗レトロウイルス治療薬の使用や、HIV 感染症の最も一般的な治療法としてHAART の使用を組み合わせる抗HIV 治療の最近の変化により、患者は将来に希望を持てるようになった。この臨床上の利益は、ウイルス複製を最大限抑えた結果である。HAART 中の患者で見られる免疫能の回復により、HCV を含む他の多くの病原体に対しても防御できるようになる。

HCV とHIV の類似点:
HIV とHCV はいくつかの共通の生物学的特徴を持つ。両者ともRNA ウイルスで、HCV はフラビウイルス属に属し、HIV はレトロウイルス属に属する。フラビウイルスは一本鎖RNA を持ち、一方レトロウイルスは二本鎖のRNA を持つ。両者のウイルスの生活環にはいくつかの違いがある。HIV-RNA は逆転写酵素によりDNA に転写され、プロウイルスを構築して感染細胞のゲノムに統合される。この統合が非可逆的なHIV 感染症の原因となる。反対に、HCV のゲノムは細胞のゲノムに統合されず、肝細胞の細胞質でウイルスの複製が起こる。この非統合により、HCV を撲滅し感染症を治癒させることはHIV に比べれば容易であることが予想される。
他の両ウイルスの特徴は、それぞれ多種のウイルスゲノムが存在し、多くのジェノタイプ、いわゆる亜型と『マスターシークエンス』近似の遺伝子的多型性を作り出していることである。この遺伝子的多型性はRNAウイルスでは、各々のポリメラーゼ(HIV は逆転写酵素、HCV はRNA ポリメラーゼ)の転写ミスの結果により複製エラーが高率に起こることによって生じる。これらの酵素は、DNA 依存性のDNA ポリメラーゼに比べて、高率にエラー産物を生ずる。逆転写酵素による変異は1×104-5 に1 回の確率で起こり、それはHIV が1 回転写されるごとに1 つの変異を生ずることを意味している。HCV についても同様の数字が挙げられる。このウイルスは一番離れているもの同士で、34%の遺伝子相同性を有する。この遺伝子的多型性はHIV はさらに幅広く、それはウイルスの二つのRNA 鎖の間で、『鎖選択』と呼ばれる現象が起こった後、再び二本鎖となるからであろう。この多型性により、両ウイルスは周囲の状況に順応してより存在しやすいよう進化し、免疫機構や薬物からすり抜けている。両ウイルスが最も変異に富んでいる遺伝子領域は膜蛋白をコードしている領域で、これは免疫機構の圧力があっても、ウイルスを産生できることに関係する。HCV におけるこの部位の多型性は、6 つのジェノタイプに分類され、またいくつかのフェノタイプにも分類されている。同じように、HIV-1 でも3 つの大きなタイプに分類されており、それらはM(main)の10 のサブタイプと、O(outlier)、最近言われ始めたグループN である。
ウイルスの種の分類するのは、ただ単に学問的興味だけでなく、臨床上有用だからである。同じウイルスでもある種では、特定の標的となる細胞を持っていたり、抗ウイルス薬の感受性が違っていたり、同じ感染経路でも感染性が違う。HCV では、サブタイプ1b は全ての他のサブタイプに比べインターフェロン治療の反応性が悪い。さらに、いくつかのサブタイプでは、特定の世代、地域、リスクグループで非常に多いことがある。(例:HCV サブタイプ3 はヨーロッパの静脈内麻薬常用者に多い。)
血中に循環しているウイルス粒子を検出し定量するいくつかの増幅技術により、HIV とHCV 間の他の類似点に関する情報を得ることができる。最近、血中でのウイルス粒子の平均寿命が5 時間以内である点や、驚くべきスピードでウイルスの世代交代が起こっている点など両ウイルスの動態に関して類似点が報告されている。HCV は、1 日に1011-12 産生されると概算されている。さらに以前の指摘と違って、HCV またはHIV 感染者のウイルス量は、ほとんど一定で変化は小さく0.5log 以内である。これにも関わらず、違う患者では有意な差を示す場合がある。HCV 感染症患者でウイルス量が多い者は、HIV 非感染者と比べHIV重複感染者の方が多いことが報告されている。さらにHCVのウイルス量は、CD4細胞数を反映するかのように、HIV 感染症患者では免疫不全のレベルと逆送関する。

なぜHIV 重複感染のある患者のC 型肝炎を治療するのか? :
最近になって、HIV 感染症患者の生命予後に対し肝疾患の関与が明らかになり、HIV 感染症患者でも慢性C型肝炎の治療に関心が向けられるようになった。表1 にこれらの証拠を示す。1997 年9 月のNIH のConsensus Conference でHCV感染症の治療に焦点が当てられ、HIV と重複感染している慢性C 型肝炎の患者では、疾患の進行を早める可能性があることが提起された。それで、HIV 感染症が安定しており、臨床的にも機能的にも安定した状態の患者では、治療を考慮すべきであると考えられた。HCV 治療の一般的なrecommendation によると、それに該当する患者は、55 才未満、持続的にトランスアミラーゼが高値(正常の1.5 倍以上)、血中でのHCV 検出、肝生検で活動性があるものである。
ここ2 年間HIV 感染症治療としてHAART の利用が広まるとともに、肝毒性の報告件数も増加している。我々の最近のスタディでは、HAART 開始後14%近くの患者で肝毒性を来している。肝毒性の頻度は他のリスクグループに比べ、静脈内麻薬常用者の方が高く、これは、このリスクグループではHCV 感染症の頻度が高いことが直接関係している。それでC 型慢性肝炎は、肝毒性を惹起する因子の一つであり、HAART 以前のHIV 感染症患者においても、HCV 感染症の治療には重大な支障があった。

α インターフェロン治療
αインターフェロンは最近になるまで、慢性C型肝炎の治療として唯一認められていた治療であった。HIV 非感染者における持続有効率は21%であり、その率はインターフェロンの投与量依存性に上昇する。HIV 感染者においてもその有効性はほぼ同等であるが(表2)、CD4 細胞数が少ないほどその率は低下する。さらに、HIV 感染症患者で持続有効性を示すものは、免疫不全が進行するにも関わらず、長期間の観察でもHIV 陰性者に比べ再燃することが少ない。このことは、これらの患者ではHCV 感染症を根治できたことを示す。
肝の線維化や肝構築組織の破壊の状態は予後判定のマーカーとなり、またインターフェロンの有効性と密接に関係する。最近のスタディでは、HCV とHIVの重複感染の患者は、HIV 陰性者に比べ線維化や組織の破壊の程度がひどく、治療に反応しにくいことが報告されている。
持続有効率とインターフェロンの総輸注量との関連性について、慢性C 型肝炎の治療として現在一般に使用されている量が至適量とは言えないようである。事実、血中からウイルスを消失させるのに、インターフェロンの高用量が勧められ、投与間隔が短いほど長期間持続させる事ができる。現在行われているいくつかのスタディでは、最初の1-2 週間高用量で投与間隔を短くしてインターフェロンを輸注し、その後維持量とする’導入-維持’レジメンの評価が行われている。
研究段階であるが、高用量で投与間隔の短いインターフェロン療法や、ポリエチレングリコールと共有結合させたインターフェロンの登場の必要性が高まっている。このポリエチレン化インターフェロンは、共有結合が徐々にとれて、インターフェロンをゆっくり放出させる。さらに、インターフェロン濃度を持続的に保つことで、ウイルス抑制により有効となる。この形のインターフェロンの他の重大な利点は、長期間治療が必要な際に問題となる投与方法が簡単であることが挙げられる。長期間インターフェロンを続けることが持続的有効性を高めることに繋がるのは既に証明されている。

HCV 感染症に対する新薬との併用療法
HCV とHIV に共通するウイルス学的特徴が知られるようになってから、HIVの分野において学んだ経験から、HCV 感染症の治療に対し新たな試みがされるようになった。αインターフェロンの単回投与により、24 時間以内にHCV ウイルス血症を抑制することができるが、これはHIV ウイルス血症がHAART により抑制されるよりも有意に早く、このことよりHCV 感染症のウイルス動態はHIV よりも早いことがわかる。αインターフェロンのような1 種類の薬剤の投与によるウイルスの選択的抑制では、ウイルスの寿命が短く高率に変異を起こす点を考えると、薬剤耐性株を容易に作りウイルス学的治療失敗に繋がる。このことは、HIV 感染症においては既に証明されており、現在の抗レトロウイルス療法の治療ガイドラインにある多剤併用療法の使用を推奨する根拠となっているが、HCV 患者において治療失敗例が、HCV変異株によるインターフェロン耐性が原因であるといった根拠はない。しかしHCV ジェノタイプ1b の患者におけるインターフェロンに対する反応性の悪さは、インターフェロン感受性決定部位(Interferon-sensitivity determination region: ISDR)が存在するNS5A 遺伝子の特徴的シークエンスと関係している。HCV 感染症のこの特徴は、HIV-2 やHIV-1 グループO における非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対する耐性獲得の機序に類似しており、そのためそれらのタイプでは、HIV-1 グループM とは違い、それらの薬剤に対し自然耐性を持つ株の出現が見られる。
HCV に対する武器は、近年有意に増えている。他の疾患で使用されていた抗ウイルス剤のリバビリン、アマンダジンとインターフェロンの併用療法を慢性C型肝炎の患者に使用することにより、持続有効率がリバビリンの場合50%近くに上昇した。現在HIV 感染者におけるHCV 感染症の治療に、この併用療法を用いた臨床研究が2 つ行われている。リバビリンは広い抗ウイルススペクトラムを有する合成ヌクレオシド系薬剤である。アメリカでは、その薬剤は小児の呼吸器のウイルス感染症の治療のためのエアロゾールタイプが最初に承認された。いくつかのスタディにより、この薬剤のHCV に対する確かな有効性が証明された。この薬剤は慢性C型肝炎の治療に単剤として使用した場合、血清ALTは下がるが、持続的有効性はほとんどない。このためリバビリンはC型肝炎に対し単剤投与では承認されず、ほとんど常にインターフェロンとの併用療法で用いられる。最近まで、慢性C型肝炎の治療としてのインターフェロンとリバビリンの併用療法は、再燃例やインターフェロン不応例のみにしか認められておらず、第2 選択であった。しかし最近、我々の第1 選択はこの併用療法であり、インターフェロン単独療法よりも高い持続有効率を示すため、標準的方法となりつつある。最も重要な副作用は、可能性としては低いが、リバビリンによる溶血性貧血であるが、それ以外はインターフェロン単独療法と同程度の発生率であった。
他の抗ウイルス剤では、未だに抗ウイルスメカニズムが明らかになっていないが、インフルエンザの治療や予防に認可されているアマンダジンもHCV に対し有効性を示している。アマンダジンとαインターフェロン併用療法にて高い有効性(投与後3ヶ月におけるHCV のクリアランス)を示したといういくつかの報告がある。アマンダジンはαインターフェロンに比べ廉価(アマンダジン30 ドル/月、αインターフェロン500 ドル/月)で、内服投与(100mg を1 日2回)でしかも非常に飲みやすい。現在αインターフェロンとリバビリンまたはアマンダジン療法を用いたHCV に対する2 剤、3 剤併用療法の有効性と安全性を検討する研究が進められている。現在まで、HCV の治療に対しアマンダジンはFDA の認可を受けていない。新しい抗HCV 剤の初期使用や併用療法を盛り込んだスタディにより、2、3 年前に抗レトロウイルス療法により起こった出来事の再現になるであろう。
HCV 撲滅のために、新しい薬剤の併用や新しい治療戦略など多大な努力がされているにもかかわらず、標準的なインターフェロン療法やインターフェロンとリバビリンの併用療法に有効を示す慢性C 型肝炎患者は半分にも満たない。だからこそ新しい薬理学的オプションを持つ薬剤や治療戦略が必要である。インターフェロンは、HCV のウイルス動態をもっと効率よく抑制するよう、もっと有効的に使用することにより、持続有効率を上げることができるかも知れない。それには、HIV 感染症の治療で既に用いられている段階であるが、HCV 蛋白の分子構造の理解に裏付けされた特異的な抗ウイルス剤の開発を行うなど、HCV 感染症の治療に向けてもっとウイルス学的アプローチが必要となるであろう。プロテアーゼやヘリカーゼインヒビター等のいくつかの新しい薬剤が現在研究中であるが、これらはウイルスの複製を抑制し急性HCV 感染症の予防に対する有効性が期待されている。HCV プロテアーゼやヘリカーゼの構造は既に報告されているが、これらのインヒビターの効果を調べるための適当な培養細胞や動物モデルがないことが、新たな併用療法の開発に対し大きな障害となっている。HCV 感染症の治療のための他の分子学的なアプローチとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボゾームの使用を含めた研究が進行している。アンチセンスはHCV ゲノムからのHCV 蛋白転写を抑制し、一方リボゾームはウイルスRNA を含めRNA を選択的に分解する。最近CMV 網膜症の治療にアンチセンス薬剤のformivirsen がFDA で初めて承認されたことにより、HCV を含めた他のウイルスに対し同様の効果を有するかどうかの研究に拍車をかけるであろう。
HIV の分野では、現在併用療法が標準で、単剤や2 剤併用療法はもはや推奨されていない。さらに、重症の免疫不全のある患者では初期には併用療法を用いず少し待っていたが、現在では全ての患者にできるだけ早く治療を開始することが当然となっている。HCV 感染症に関しては、終末期の肝疾患(肝硬変)になる前に治療することが強く推奨されている。HIV の例では血漿ウイルス量と薬剤有効性の関係はまだ完全に確定されていないが、HCV ではベースラインの血漿ウイルス量は治療の有効性に直接関係してくる。HCV ウイルス量の高い患者では、インターフェロン単独療法の持続有効性は7%に満たない。現在までは、併用療法は治療不応性やインターフェロン療法後再燃した患者に限られているが、特に高いHCV-RNA レベルを有する患者において、それは第1選択として広く用いられるようになるだろう。併用療法使用に向けた流れは、最初のHCV プロテアーゼ、ヘリカーゼインヒビターが利用できるようになればさらに加速するであろう。コストベネフィットを含めた他の要因もHCV 感染症の初期治療オプションとして併用療法のレジメンが支持される理由となる。抗HCV 療法はHIV 治療の足跡を追随しているので、すぐに”早くそして強く”治療する有名な言葉を用いるようになるだろう。

HIV-HCV 重複感染者における抗ウイルス剤の相互作用と副作用
慢性C 型肝炎の治療に勧められているαインターフェロンの投与法は、300-500 万単位を週3 回皮下注であるが、HIV 感染症患者では10-15%にCD4 数の急激な低下をもたらすことがある。この低下は通常治療開始後6-14 週目に起こり、一過性で治療を中止する必要はない。しかし、少数例ではCD4 減少症が非可逆性になることがあり、これは治療を中止しても続くことがある。研究者の中には特異的なHLAアリルを有する場合出現する予測できない副作用とする者もいるが、他の学者では見られないとしている。多くの例で、インターフェロン療法開始後のCD4 減少症は、これらの細胞の破壊が進むよりはむしろリンパ組織と循環している細胞の置換等によると考えられている。しかしCD4 数の低い患者では、内因性のαインターフェロン濃度が上昇し免疫不全を助長しているので、インターフェロンの投与は禁忌であるかも知れない。
HCV 感染症におけるHIV プロテアーゼインヒビターの影響は2 つの方法で調査されている。一つ目は、ウイルスプロテアーゼはそれぞれのウイルス粒子の成熟段階に不可欠なものであるので、HIV とHCV 両方にコードされており、それらの一つに対するインヒビターは、他のものも抑制する可能性である。しかしこれらの薬剤の特異性はいくつかのスタディで証明済みで、いくらHIV プロテアーゼインヒビターが投与後2-3 ヶ月で、HIV 血漿ウイルス量を劇的に減らすことができても、HCV ウイルス量に関しては代用できない。そこで、HCVNS3セリンプロテアーゼにターゲットを絞った特異的な薬剤が、HCV 複製を効果的に抑制するために必要となるであろう。二つ目は、HIV 感染者において、HIVプロテアーゼインヒビターの投与によってもたらされる免疫改善が、HCV 複製に対する抑制的効果を持つ可能性である。残念なことに、HAART 開始後患者のCD4 数が劇的に増加する患者においてもHCVウイルス量は有意には変化しないので、これが起こっている証拠はない。さらにあるスタディでは、HCV ウイルス量や肝酵素の一過性の増加がHAART 開始後認められた。これは急に免疫能が回復し、細胞障害性T 細胞が肝細胞の破壊が増加したためと考えられている。
リバビリンは多くの違ったウイルスの複製を抑制するヌクレオチドアナログである。そのHCV に対する抗ウイルス活性のメカニズムはよく分かっていない。以前のスタディでは、HIV に関しては同様の効果を示さないと言われていた。抗レトロウイルス剤とリバビリンの相互作用に関する文献は散発的である。臨床的には、リバビリンと抗HIV 剤との薬理動態的相互作用は気づかれていない。リバビリンはチトクロームP450 酵素を抑制したり誘導したりする作用を持っていないので、プロテアーゼインヒビターとの併用に関し危険性はないであろう。しかし、試験管レベルでは、相互作用が3 つのメカニズムにて起こる可能性を示唆している。それはリン酸化による影響、酵素活性の交代、細胞質核酸の影響である。リバビリンはin vitro でジドブジンやスタブジンなどのいくつかのヌクレオシドアナログのリン酸化を抑制したり、また逆にジダノシンに対してはリン酸化を促進させる。一方、リバビリンの使用に関して溶血性貧血は主な副作用であるので、骨髄抑制の原因となる他のヌクレオシドアナログと併用する際には注意すべきである。二つの治験があり一つはアメリカで、もう一つはスペインで行われているが、HIV 感染症患者の治療に対し、インターフェロン+リバビリンの安全性と有効性が現在調査されている。これらの疑問点に対し何らかの答えが出ることを期待している。

結論
HIV 感染症患者の生命予後は、新しく高い有効性を持つ薬剤の併用療法導入以来著しく延長した。肝疾患、主に慢性C 型肝炎に続発するものは、静脈内麻薬常用者や輸血歴のある者だけであったが、現在HIV 陽性者における入院や死亡の原因として増加している。HCV 感染症でより早く肝硬変まで進行してしまう経過は、HIV とHCV の重複感染者によく見られる。一方、慢性肝炎患者は抗レトロウイルス剤に暴露されているとその肝毒性が増して投与できなくなり、彼らの生命予後に影響する。αインターフェロンはHIV と重複感染している慢性C型肝炎の15-20%に持続有効性が認められる。しかしCD4 数が低くまたHCVウイルス量が多い患者では、治療に関して有効性に乏しい。HIV とHCV の生物学的類似点はHCV 感染症において併用療法の使用を強く支持する。リバビリンのような新たな薬剤に対して、HIV との重複感染症患者においてその効果や安全性が調査される必要はあるが、最近この使用の機会を得ることができるようになった。

表1 :HIV 感染症患者における慢性C 型肝炎の実態

  • HIV 感染症患者において慢性C 型肝炎は一般的な疾患である。:静脈内麻薬常用者や輸血の既往のある患者では75%以上に発症する。
  • HIV 感染者において慢性C 型肝炎は、その肝疾患の経過を進め、早く肝硬変へ移行する。
  • HIV 感染症患者で、ウイルス性肝疾患による入院や死亡率が増加している。
  • HIV 陽性者の生命予後は、HAART 導入以来劇的に改善したが、抗レトロウイルス剤による肝毒性の出現が、慢性C 型肝炎の患者で多く見られ、それが生存率を規定してしまう。
  • 重症の免疫抑制がない場合、HIV 陽性者と陰性者では慢性C 型肝炎の治療に対する有効性に差はない。

表2: 慢性C 型肝炎に対するインターフェロン療法の有効性に関するHIV 陽性者と陰性者の比較

HIV 陽性
(n=80)
HIV 陰性(n=27) P
初期有効性
(治療開始後3 ヶ月)
38.8% 44.4% 0.602
治療終了時
(治療開始後12 ヶ月)
32.5% 37.0% 0.666
持続有効性
(治療終了後12 ヶ月)
22.5% 25.9% 0.716

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中薬脂質低下合成剤による脂肪肝治療の臨床研究

中薬脂質低下合成剤による脂肪肝治療の臨床研究

  • 作者:孫勇莉

[摘要]

  • 目的
    脂肪肝に対する脂質低下合成剤の臨床効果を探る。
  • 方法
    肝機能低下、高度の肥満、血流悪化が見られる脂肪肝患者120例を選び、2組に分ける。治療組70例は脂質低下合成剤を経口し、対照組50例には多稀康こう丸を服用してもらった。治療後の二組の総合有効率、肝機能及び血液中の資質の変化について観察した。
  • 結果
    治療経過後、治療組の総合有効率は対照組より優れ(P<0.05);患者のALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPが平均して明らかに低下し、対照組より優れていた(P<0.05或いは0.01);総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)及びLDLコレステロール共に治療前に比べて明らかに低下し(P<0.05或いは0.01)、その中でもTGは対照組と比較して差異が顕著だった(P<0.05)。
  • 結論
    脂質低下合成剤による脂肪肝の治療効果は顕著であり、明らかに肝機能を改善させ、血中の脂質を低下させた。

脂質低下合成剤は炒白樹、焦山査、紫決明子丹参、生大黄、垂盆草等10種類の中薬で組成されている。肝機能の向上、肥満の解消、血流の促進効果を持つ。長年の臨床や薬効学実験の結果、脂質低下合成剤は脂肪肝に対して明らかな改善作用が見られ、且つ程度が違う高脂血症脂肪肝のラットの血清と肝臓中の総コレステロールと中性脂肪の含有量を低下させることができた。さらに一歩進んで本薬品の有効性を客観的に評価するため、我々は2001年1月~2002年12月の間、「中薬新薬の臨床研究指導原則」と肝臓病学における脂肪肝の診断基準[1]を基に折を見て、対照臨床試験方法を並行して行った。肝機能低下、高度の肥満、血流悪化が見られる脂肪肝患者120例(治療組70例、対照組50例)に対する脂質低下合成剤の治療を観察した。結果報告は以下の通りである。

1 臨床資料

1.1 病例の選択

脂肪肝の診断基準と中医症例に符合し、ウイルス性肝炎、薬物性及び免疫性肝臓病、年齢が18歳以下または65歳以上の患者、妊娠または授乳期の女性、ウイルス性肝炎、薬物性及び免疫性肝炎と肝硬変、肝臓ガン等重症の肝臓病患者は除く。全病例120例は折を見て治療組、対照組に分けた。治療組は70例あり、その内男性が47例、女性が23例いた。対照組は50例いて、その内男性が34例、女性が16例いた;治療組の年齢は32~65歳、平均年齢は48.4歳である;対照組の年齢は31~64歳、平均年齢は48.2歳である;治療組の病気経過は4.5ヶ月~12年、平均5.9年である;対照組の病気経過は5ヶ月~11年、平均5.5年である。二組間の性別、年齢、病状と病気経過は比較統計学処理上、差異が均しくP>0.05より顕著でないようにした。

1.2 診断基準と中医の論証

  1. 病気をメインに病証結合の方法を≪中薬新薬の脂肪肝治療の臨床研究指導原則≫(国家中医薬管理局)と肝臓病学における脂肪肝の診断基準を基に、全ての患者は以下の診断基準に符号した。
  2. B超音波検査で脂肪肝と示されていること;肝腫脹、閃光肝、血管模糊、出波衰減であること;またCT検査で肝臓密度が全体的に低下していること
  3. 血中の脂質が増加し、総コレステロール>6.47mmol/Lまたは中性脂肪>2.30mmol/Lであること
  4. 肝機能検査でALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPが軽度から中度にかけて上昇していること
  5. 中医によって肝機能低下、高度の肥満、血流悪化が論証され、脇腹の腫れと痛み、重いけん怠感、腹部の腫れ、口の苦味、台薄或いは微弐、脈弦或いは弦数等。

1.3 治療方法

治療組の脂質低下合成剤は炒白樹30g、伏令15g、決明子30g、焦山査30g、狗紀子15g、荷葉15g、紅花6g、紫丹参30g、生大黄9g、ウコン9gで組成していて、毎日一服、水で煎じて飲む。対照組は多稀康こう丸を毎日3回、3粒ずつ経口服用した。各組とも6週間を一つの治療周期として薬を服用してもらった。

1.4 観察指標

治療期間中、患者の症状、体調の変化を観察した;治療前と治療後にB超音波、TG、TC、ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPを測定した。脂肪低下或いは脂肪肝をメインに治療する漢方薬や西洋薬は使用を禁じた。

1.5 統計学方法

計量資料はt検験を、率の比較はX2検験を採用した。

2 結果

2.1 治療効果評定基準

≪中薬新薬の臨床研究指導原則≫(医薬国家中管理局)を基に以下の治療効果評定基準を制定した:臨床治癒=病気の症状と体調の根本的消失、B超音波検査の正常回復、肝機能の正常化、血中の脂質(TC、TG)の正常範囲への低下;顕著的効果=2/3以上の症状及び体調の明らかな回復、B超音波検査の好転がⅠ度以上(例:中度から軽度への回復など)、血中の脂質及び肝機能改善が50%以上の者;有効=症状及び体調が好転し、B超音波が音像図の好転を示し、血中の脂質及び肝機能の改善など指標の数値上で改善があった者;効果なし=上述の基準に達しなかった者。

2.2 治療結果

2.2.1 二組の患者の総合治療効果は表1参照。

2.2.2 二組の患者の治療前、治療後の肝機能の結果比較は表2参照。

2.2.3 二組の患者の治療前、治療後の血中の脂質測定の結果比較はは表3参照。

表1 治療後の総合治療効果比較例(略)
表2 治療前後の肝機能の測定結果比較 (略)
表3 二組の患者の治療前、治療後の血中の脂質測定の結果比較。(略)

脂肪肝の治療過程中、わずかだが1例に軽度の下痢が見られたが、治療中断をしなかったところ、数日後には自然と回復した。治療過程において、血像や肝腎機能に良くない影響は見られなかった。

3 討論

肝臓病学における脂肪肝の診断基準を基に、全ての患者は以下の診断基準に符号した。

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垂盆草と脂肪肝の研究資料 2

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草と脂肪肝の研究資料 2
垂盆草と脂質過酸化防止の研究
「垂盆草によるマウスとラットの肝臓の脂質過酸化損傷の防護作用」

  • 研究者:薛継艶、魏懐玲、劉耕陶
  • 「垂盆草対小鼠和大鼠肝臓脂質過酸化損傷的防護作用」
  • 中西医結合肝病雑誌、1993,(3):14~15

垂盆草の水抽出エキスが、急性アルコール中毒によってもたらされるマウスの脂質過酸化による損傷に与える影響とフリーラジカル(活性酸素)の消去作用について研究した。その結果、垂盆草の水抽出エキス(10g/kg)を経口すると、アルコールがもたらすマウスの肝臓の解毒酵素GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)の消耗やMDA(血漿中過酸化脂質)の生成を明らかに防止した。また、垂盆草の水抽出エキスとラットの肝臓微粒体を体外培養したところ、NADP-Vitc(酵素系脂質)による微粒体の脂質過酸化とFe2+-(アスコルビン酸)によるラットの肝細胞の脂質過酸化による損傷にも顕著な防護作用があることがわかった。

垂盆草と脂肪肝の研究資料 1

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草と脂肪肝の研究資料 1
脂肪肝の薬物治療

  • 研究者:慮書傳、蔡嚇東、雀振宇(北京地壇医院 北京 100011)
  • [目的]
    脂肪肝治療の薬物及び治療法を正確に選択すること。
  • [方法]
    国内外の関連文献を総括する。
  • [結論]
    臨床の医師は脂肪肝の原因や症状をもとに、脂肪肝の薬物治療を正しく選択すべきである。

脂肪肝は独立した疾病でなく、多くの原因から引き起こされる肝臓の脂肪変性である。最も多い原因に肥満、アルコール中毒、糖尿病が挙げられる。その次に栄養失調、薬物中毒、妊娠、遺伝等がある。国民の生活水準の改善により、脂肪肝の発病率は年を負う毎に上昇する一方であり、平均人口の10%を占めるほどである。肥満、アルコール、糖尿病の人々の中では脂肪肝は50~60%に達している。その内、25%の患者は肝臓が繊維化しており、1.5~8%の患者が肝硬変にまで悪化している。このため、脂肪肝の治療は慢性的な肝臓病への進展の阻止と予後改善にとって大変重要である。

  • 脂肪肝の薬物治療

脂肪肝の薬物治療は多種あり、主に次のように分かれる。

  1. 脂質低下性薬物
  2. 肝臓保護と脂質低下性の漢方中薬

ここで説明しておくべきことは現在でも脂肪肝の治療は病因を積極的に排除することであり、正しい食習慣が大切である。薬物はあくまで補助治療であり、脂肪肝の病因と病状をもとに正しく選択すべきである。

  • 肝保護酵素低下薬

以前は脂肪肝が肝機能に与える影響は小さいととらえられてきたが、近年、脂肪肝の発病率増加に伴い、30%以上の脂肪肝患者の血中酵素値が正常値の2~3倍に達していることがわかった。特にアルコール性脂肪肝の患者の場合はALT(GPT)、AST(GOT)が正常値の5~10倍にまで上昇することがわかっており、γ-GTPも平均値より明らかに高くなるため、アルコール性肝障害の診断材料となっている。このため、肝機能異常の患者には肝保護酵素低下薬を与えるべきである。選択としては垂盆草冲剤がある。

Drugs for treatment of fatty liver
Lu Shuwei,Cai Haodong,Cui Zhenyu
(Ditan Hospital,Beijing 100011,China)

[Abstract] objective: To select the suitable drugs and therapy for steatohepatitis. Method: Related literatures of national and overseas were summarized about drug therapies steatohepatitis. Result: Treatment for steatohepatitis must get rid of the etiological factors first and adjust diet intake. The drug therapies are only an auxiliary therapy. Conclusion: Doctors must select drug treatments for steatohepatitis reasonablely according to the etiological factor and state of steatohepatitis.
[Key words] steatohepatitis; cholesterol; triacylglycerol; drug treatment

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 3

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 3
「健脾疏肝法」による脂肪肝治療

  • 医薬衛生報

[摘要]

1997年7月より2000年5月まで「健脾疏肝法」を脂肪肝42例に運用したところ、比較的良い治療効果が得られた。観察した患者は全員で82例おり、ランダムに治療組42例、対照組40例に分けた。82例の患者全員には超音波で肝臓に脂肪蓄積が示され、81例には程度が違う高脂血症があり、23例にはGPT値の上昇が見られた。

脂肪肝の診断は現段階では特別な生物化学的指標はなく、理論上、肝生検が最も直接で正確な診断方法であるが、臨床上、病人にとっては受け入れがたいものである。学者によっては最近の単純性脂肪肝と脂肪性肝炎では肝生検に頼ることは少なく、中度以上の脂肪肝でも、超音波診断では正確性は90%に達し、繊維化していない肝臓なら、超音波診断では正確性が100%に達することができる。このため、我々は超音波検査で肝臓内の光点分布や密集状況、エコーレベルを主な診断根拠とし、同時に患者のGPTと中性脂肪の値を観察した。

[治療方法]

  1. 治療グループの処方薬組成「健脾疏肝法」:垂盆草30g、党参12g、白術9g、伏令9g、意義仁15g、沢写9g、柴胡6g、黄連6g、丹参9g、白及30g、決明子30g等。毎日一回、朝晩2回に分けて経口してもらった。
  2. 対照グループは「多稀康丸」1.8g、ビタミンC 0.3gを毎日3回;「吉非羅斉丸」0.6gを毎日2回経口してもらった。
  3. 二グループとも60日を一治療周期とし、連続して二周期、120日間の観察を行った。
  4. 治療期間中は低脂肪食をとり、禁酒をし、ALT(GPT)が高い者にはよく休息をとってもらった。

[治療効果基準]

  • 臨床治癒=超音波検査での肝臓形態の正常回復、GPTの正常化、血中の脂質の正常範囲への低下
  • 著効=超音波検査で肝臓の光点や密集が明らかに好転していること;エコーレベルが明らかに軽減していること;GPTが正常化していること;血中の脂質の低下
  • 有効=超音波検査で肝臓の脂肪が軽度に改善していること;血中の脂質の低下
  • 無効=有効基準に満たなかった者

[治療結果]

治療グループ42例の内、臨床治癒は10例、著効は22例、有効は6例、無効は4例、総有効率は90.5%であった。対照グループは40例の内、臨床治癒は4例、著効は14例、有効は8例、無効は1例、総有効率は65%であった。

統計学処理上、二グループには非常に顕著な差異が見られた。脂肪肝は一般的に良性の病気と言われており、予後は良好である。しかし、現在、脂肪肝は直接或いは炎症の経過後に、肝臓の繊維化にまで発展すると言われており、約25%の脂肪性肝炎が最終的に肝臓の繊維化にまで発展している。

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 2

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 2
中薬による脂肪肝30例の治療効果観察

  • 研究者:陳后華、王改麗
  • 中華医薬雑誌 第3巻 第7期

[摘要]

  • 1.1  一般資料
    60例の患者の内、男性は38例、女性は22例あり、25~30歳が6例、31~35歳が34例、36~40歳が15例、41~50歳は5例である。60例の患者は全て問診の病例である。
  • 1.2  診断基準
    この三条件の内、一つでも該当しない場合や、他の原因によってALT(GPT)が上昇している場合は除いた。

    1. 肝臓の腫れと痛み
    2. 血中の脂質:中性脂肪>3.0mmol/L;肝機能:GPT(ALT)>40U/L
    3. 超音波で中度、重度の脂肪肝と示していること
  • 1.3  観察方法
    60例はランダムに30例ずつ二組に分けた。二組の患者には全員、以下の方法を実践してもらった。
    基本処方:垂盆草20g、炒白樹各15g、雲令30g、山査30g、草決明30g、党参15g、牡蠣30g。

    • 対照グループ:毎日「脂必妥」2~5片と「聯本双脂」5~10粒を服用してもらった。毎日3回、半年間続けた。薬量は検査結果によって調整した。
    • 治療グループ:「自擬流肝健脾軟肝湯」を水に煎じて服用してもらった。毎日1回ずつ、月に20回服用してもらってから、10日間の休憩をはさんだ。3ヶ月間の治療観察をした。
    1. 体育運動に参加してもらい、心拍数が120回/min まで上昇し、0.5h/d以上を維持するほどの強度な運動を行う
    2. 食事の量をコントロールし、元の量の半分にまで落とし、油濃い食べ物はひかえる。
  •  1.4  検査項目
    毎月、血中の脂質、肝機能を1回、超音波は3ヵ月に1回検査をした。

[結果]

脂肪肝は一種の、多様な要因から引き起こされる肝脂肪内の脂質が蓄積過多な病理状態であることを指す。一般には肝臓に5%以上の重さの中性脂肪量を含んでいる場合を指す。我々は主に肥満、食べすぎ、運動不足、または長期間の飲酒などによって引き起こされた脂肪肝患者を60例集めた。患者は主に肝臓の腫れや痛みで来診しており、総合的に症状や体調を見てから、肝機能や血中の脂質検査、超音波検査によって診断結果を下した。軽度の脂肪肝の場合は乱れた生活習慣を改め、運動するよう勧めた。中度、重度の脂肪肝に対しては上述の通りの薬物治療を行った。脂肪肝治療において肝機能の向上、肥満の解消、血流の促進を図るため「自擬流肝健脾軟肝湯」の処方を選んだ。全ての配合は相乗効果によって肝機能の向上、肥満の解消、血流の促進効果に優れ、肝臓保護や脂質低下を達成し、臨床症状及び肝臓の病理状態の目的を改善した。

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 1

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草の脂肪肝臨床応用資料 1
中薬:脂質低下合成剤による脂肪肝治療の臨床研究

  • 研究者:孫勇莉、趙鋼、王霊台
  • 中華現代臨床医学雑誌 第1巻 第3期

[摘要]

  • 目的
    脂肪肝に対する脂質低下合成剤の臨床効果を探る。
  • 方法
    肝機能低下、高度の肥満、血流悪化が見られる脂肪肝患者120例を選び、2グループに分ける。治療グループ70例は脂質低下合成剤を経口し、対照グループ50例には「多稀康丸」を服用させた。治療後の2グループの総合有効率、肝機能及び血液中の脂質変化について観察した。
  • 結果
    6週間にわたる治療経過後、治療グループの総合有効率は対照グループより優れ(P<0.05);患者のALT(GPT)AST(GOT)γ-GTPが平均して明らかに低下し、対照グループより優れていた(P<0.05或いは0.01);総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)及びLDLコレステロール共に治療前に比べて明らかに低下し(P<0.05或いは0.01)、その中でもTGは対照グループと比較して差異が顕著だった(P<0.05)。
  • 結論
    脂質低下合成剤による脂肪肝の治療効果は顕著であり、明らかに肝機能を改善させ、血中の脂質を低下させた。
    脂質低下合成剤は垂盆草、炒白樹、焦山査、決明子、紫丹参、生大黄等で合成されている。肝機能の向上、肥満の解消、血流の促進効果を持つ。長年の臨床や薬効学実験の結果においても、脂質低下合成剤は脂肪肝に対して明らかな改善作用が見られ、高脂血症脂肪肝のラットの血清と肝臓中の総コレステロールと中性脂肪の含有量を低下させることにも成功している。

Study on the curative efficacy of Jiangzhi Heji in treatment of fatty liver

  • Sun Yongli,Zhao Gang,Wang Lingtai
  • Zhabei District Hospital of TCM,Shanghai200072.

[Abstract]

  • Objective
    To study the curative efficacy of Jiangzhi Heji in the treatment of fatty liver.
  • Methods
    120cases with fatty liver were randomized into treating group(70cases)and controlled group(50cases).
  • Results
    The total effective rate in treating group was higher than that of control group.
  • Conclusion
    It is showed that Jiangzhi Heji is useful for treating fatty liver.