垂盆草の効能と主治

垂盆草の効能と主治

(一)垂盆草(日本名:ツルマンネングサ) Sedum sarmentosum Bunge

ベンケイソウ科多年生肉質草本植物の垂盆草の新鮮で乾燥させた全草である。

  • 【別名】
    (中国名)狗牙草、石甲草、三叶佛甲草、地蜈蚣草
  • 【植物形態】
    多年生肉質草本で、茎は地上を匍匐しており、種子が盆の中についた場合に長い茎が盆を沿って垂れ下がることから垂盆草と名づけられた。根が生え易く、高さは10~20cm程度、葉は輪生し、肉質で針を逆にした形もしくは矩円形である。長さは1.5~2.5cm、幅3~6mm、先端は尖っており、基部に矩がある。花弁は5枚で、淡い黄色で、頂点は短く尖っている。おしべは10本あり、比較的花弁は短い。鱗片は小さく四角形である。心皮は5つで若干開いている。果実は5つである。花期は4-5月で、果実の実る時期は6-7月である。
  • 【生態分布】
    山部崖の岩石地帯、狭隘部、道端、川岸に植生する。また栽培専門家もいる。中国東北地方、河北、河南、江蘇、安徽、浙江、江西、湖北、四川省など各省に植生している。主産地は浙江、江蘇及び安徽省である。
  • 【薬用部位】
    全草、異物を除去して、日干しにするか新鮮な物を使用する。夏秋季に摘採する。
  • 【成分、薬理研究】
    成分:垂盆草内に主として含有されているのは垂盆草配糖体sarmentosineである。Glc-O-CH2CH=C(CH2OH)CN 垂盆草配糖体この他にアミノ酸、フラボン、トリテルペノイド及びステロール等である。アミノ酸は主にアスパラギナーゼ(L-aspargine)、アスパラギン酸(L-aspartic)、アラニン(L-α-alanine)、ロイシン(L-leucine)、チロシン(L-tyrosine)、バリン(L-valine)などを含有する。

[薬理研究]

  1. 肝臓保護、酵素抑制作用
    動物実験により垂盆草には肝臓保護作用があることが証明された。実験動物のALT、γ-グロブリン値及び肝臓の腺維化は明らかに低下、抑制され、酵素抑制成分は垂盆草生薬及び乾燥させた全草の水溶部分に存在している。希釈アルコール抽出物の水溶部分の主な成分は垂盆草配糖体である(構造式は上記参照)。その他の研究では四塩化炭素中毒になる前に、事前にラットがフェノバルビタールナトリウムによって引き起こされた急性黄疸型肝炎にたいして、垂盆草は顕著な治療効果を現した。例としては対照グループラットの血清中のビリルビンは1.6mg/dlであったが、垂盆草グループはわずかに0.5mg/dlであった。垂盆草は持続して用い6週間以上治療したところ、病理学観察において肝細胞の炎症性浸出物は明らかに消失し、門脈域の炎症性細胞の浸潤も消失し、壊死巣も減少した。このことにより垂盆草配糖体の酵素抑制作用の主用なものとしては細胞の損傷を改善させることによって得られるものであることが証明された。異なる種類の動物の肝細胞膜抽出物を抗原として、マウスの免疫性肝炎病理変化を作り出し、2、5、9週目と区切ってマウスの血清と肝臓抗原を取って免疫を対流させて電気泳動をおこない、同時に肝細胞切片をとってクッペル細胞の増加、門脈域の中性及び単核細胞の浸潤について観察したところ、肝細胞の点状壊死等の状況から見て、垂盆草には免疫性肝炎に対しては治療作用がないことが証明された。
  2. 免疫抑制
    ラット、マウスの免疫実験中に、垂盆草配糖体の薬剤量が500mg/kgまで増加した場合、実験動物に対して顕著な抑制作用が見られた。またマウスの胸腺細胞を減少させたため対照グループの62%に止まった。ラット移植片対宿主反応を抑制する反応の実験中に、ラットの脾臓細胞リンパ節の増加指数は対照グループよりも低く、その抑制率は74%であった。この他にマウスの脾臓プラクを形成する細胞を抑制させたが、これは健全なマウスの42-46%にすぎなかった。以上、これらの実験により体液免疫にも抑制作用があることが証明された。垂盆草配糖体は動物実験を通して生体細胞免疫に対して顕著な抑制作用が証明された。また、胸腺細胞数を減少させて、T細胞の介在による移植片対宿主反応やT細胞依存による抗原-SRBCの抗体形成細胞を抑制する。副作用も小さく、毒性も低い。この他に垂盆草を服用した後のリンパ細胞の転化率及びマクロファージ機能を明らかに低下させる効能があり、有効に細胞免疫反応を抑制させることによって、肝細胞の損傷を減少させることによってALT値を低下させた。大部分の患者はALT値の低下に伴い、臨床症状も改善または治癒し、細胞免疫指標も明らかに低下したが、一部の患者の指標は元々低く、服薬後にALT値が減少し臨床症状も改善したが、逆に細胞免疫指標は上昇してしまった。しかしながら、これはひとつの将来性のある免疫抑制剤であると考えられる。調査により本製品は8-9月に採取すると、有効成分の含有量が最高であり、品種は江蘇、山東、浙江麗水や桐盧一帯の産地のものが良好なものとされている。その中でもミツバベンケイソウ(Sedum vertcillatum)の含有量が高く、錠剤製造の原料として使用することができる。

[主治と効能]

中医では、垂盆草には解熱解毒及び鎮痛、腫瘍消失、黄疸消失、湿邪排除作用があり、湿熱、黄疸、小便不調時に使用する。

効能

主治

解熱・解毒

癰疽・腫瘍、毒蛇の咬み傷、火傷、咽喉腫れ

湿邪の排除、黄疸の消失

湿熱、黄疸

酵素抑制

各タイプALT、AST値が上昇している肝炎

垂盆草の各種薬剤は肝炎治療に使用されてから30年が経過した。臨床では各タイプの肝炎に対して割合良好な酵素抑制作用を示した。垂盆草単品の各種薬剤の治療効果は70.4~74.4%の間である。例としてはその他の関連する薬物による“復方垂盆草”の場合は、酵素抑制作用は82-93%にまで上昇し、これは五味子製剤(84.2%)やBifendate(91.1%)の治療効果と相似していることが証明された。治療効果が高く、毒性が低いことから現在までに各型の肝炎治療に対して広範囲で使用されている。

楊金龍等はアシクロビルと垂盆草を使用してB型肝炎治療に関して比較を行った。アシクロビル750mgと塩化ナトリウム500mgを調合して毎日1回静脈注射したところ、1ヶ月経過後に慢性B型肝炎が治療できた患者は31例だったのに対し、垂盆草10gを経口服薬したところ、1ヶ月経過後には20例治療できたということで比較をした。治療グループは症状が改善された。例としては脱力感、集中力の欠乏、腹部の腫れ、肝臓の痛み、ALT上昇等の総有効率はそれぞれ94%、95%、80%、100%、79%であった。一方、垂盆草グループはそれぞれ89%、1%、3%、100%、70%であった。両グループ差には特に顕著な意義はなかった(P>0.05)。治療グループのHBeAgが陰性に改善したのは14/31であり、対照グループは無効であった。

劉翔等は垂盆草を使用して頸部の痛みを持つ患者50例を治療した。局部に垂盆草を敷いて15分経過時に、赤腫れ、腫れ痛が緩和した患者は37例あり、15~30分間の間に緩和した患者は13例であった。また、3日間で治癒した患者は7例、4日間治癒は12例、5日間治癒は31例であった。つまり5日以内に全て治癒させることができるのである。これは一種の簡単で、経済的にも有効な治療法である。

蘭義明は垂盆草を敷くことによって帯状の疱疹をもつ患者50例を治療したところ、治癒39例、好転10例、無効1例で、総有効率は98%であった。最短の薬剤使用日数は3日、最高は7日であった。

注意:筆者は肝寿峰を使用して5例のB型肝炎患者及び1例の慢性B型肝炎の治療を行ったが、共に良好な成果が得られた。詳細は下記の表を参照。

1.肝寿峰による5例のB型肝炎を治療した(下の表を参照)。

肝寿峰による5例B型肝炎の治療結果

番号

年齢

性別

診断

ALT

治療前

治療後

1ヶ月

2ヶ月

3ヶ月

4ヶ月

5ヶ月

1

41

男性

慢性B型肝炎(軽度)

280U/L

240

220

240

260

220

2

53

男性

慢性B型肝炎(軽度)

200U/L

220

180

200

3

31

男性

B型肝硬変(食道静脈破裂出血歴)

96U/L

42

38

32

26

26

4

34

男性

B型肝硬変(腹水歴)

84U/L

64

28

38

40

24

5

52

男性

アルコール性肝硬変非代償

1668U/L

240

80

40

28

26

3例の肝硬変の治療効果は良好であるが、2例の慢性B型肝炎に対しては無効であった。

2、慢性B型肝炎(軽度):

ウイルス抑制及び酵素抑制を共に採用して治療を行ったところ、良好な成果を得た。

男性、45歳。慢性B型肝炎が発病して10数年になるが、2000年3月よりALT、ASTの上昇が見られた(ALT:240U/L、AST:150U/L)。ウイルスマーカーはHBsAg+、HBeAg+、抗-HBc+を示した。またHBV DNA100Pg%で、他の項目は正常であった。以前より多種の肝臓病治療薬を使用して治療してきたが効果がなく、2000年6月14日より共同治療を行った。即ち、インターフェロン、fanciclovir、チモシン、復方垂盆草カプセルを使用して治療を行った。インターフェロンab(商品名:賽諾金)500万U、毎日1回皮膚注射を行う。30回行った後500万U投与すること。一日おきに皮膚注射する。治療期間は合計で9ヶ月である。Fanciclovirは1回につき500mg投与する。1日3回で治療期間は合計6ヶ月である。復方垂盆草カプセル(肝炎霊4号)1回につき4粒服用する。1日3回、治療期間は合計で6ヶ月間続ける。

投薬から3ヶ月経過後にALT、AST値は正常値にまで低下し、HBsAg、HBeAgは陰性、抗-HBcも陽性に変化した。またHBV DNAは10Pg%にまで低下した。9ヶ月目を迎えるとALT、AST値は一貫して正常値を保ち、抗-HBcは陽性、HBV DNAは陰性状態を持続した。2001年12月25日にB型肝炎ウイルスマーカーを再検査したところ、抗-HBS+、抗-HBe+、抗-HBc+のウイルスマーカーが出現しており、HBV DNA陰性の状態を示し、ALT、AST値は正常値を保持した。2002年6月6日までに再度検査を行った際も上述した結果を保持しており、患者は全快していた。

[用法と使用量]

  1. 生薬:
    (1)乾燥した垂盆草:毎回10-50gを煎じて服用する、一日3回。
    (2)新鮮な垂盆草 :毎回50-250g煎じて服用する、一日3回。または垂盆草錠剤、垂盆草シロップを作っても良い。
  2. 垂盆草沖服剤:沖服剤中には1袋につき垂盆草配糖体24mg含有されている。毎回1-2袋服用する。一日3回。
  3. 復方垂盆草カプセル:
    垂盆草、ウツボグサ、山豆根など多種の漢方薬を精製して作られたものである。カプセル1粒につき抽出物250mg含有している。毎回4-6粒のカプセルを服用する。一日に3回服用。

[注意事項]

垂盆草のALT抑制作用は有効なもので、各型の肝炎の中でも多くはALTが低下した後に、患者の肝臓病の各種症状も改善、回復するが、但し肝細胞損傷は異なる程度に応じて回復する。そのため多くの患者、特に慢性肝炎患者は服薬停止後まもなくしてから再びALTが上昇する。そのため垂盆草は臨床応用時に、その他の酵素抑制剤と同様に、比較的長い時間応用することによって治療効果が安定する。筆者の経験に基づくと、薬はALTが正常値まで低下するまで使用し、同等の薬剤量を少なくとも半年以上使用して徐々に量を減らしていき、1年以上持続して服薬停止すると再発率は最低値にまで低下する。垂盆草の毒性は非常に低いが、服薬後に胃部に違和感を感じる患者もいる。しかし、量を減らすか元の使用量を1日に4、5回に分ければ消失する。

参考文献

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  13. 李静芳等,药学画报 1981;16(5);269
  14. 杨金龙等,阿昔洛韦与垂盆草治疗乙型肝炎的比较,新药与临床,1994;13(3);175
  15. 刘翔等,垂盆草治疗颈痛50例,中国中西结合外科杂志 2001;7(2);120
  16. 兰义明等,垂盆草外敷治疗疱疹,福建中医药 1999;30(4);46
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