肝機能のトラブルを乗り越えるための常識と非常識!?
新中医学研究所所長 野村正和薬学博士に聞く
肝臓病を研究する薬学研究者でなければ知りえない”真実”
脂肪肝患者は1500万人に迫る勢いで急増し、肝炎ウイルス感染者は300万~370万人もいる。
まさに日本は「肝臓病大国」。肝機能が心配な人は、まず医療機関で診察してもらうことが先決だが、加えて、肝臓にダメージを与えてきた生活習慣を見直すことも大切。よりよい人生を過ごすために何をすればいいのか──。
肝がんへの進行が怖いC型肝炎ウイルスの感染者は
国内に300万~370万人!
肝臓のトラブルで急増しているのは脂肪肝だが、肝炎から肝硬変、さらに最悪の場合、肝がんまで進行してしまう恐れがもっとも高いのは「C型肝炎ウイルス」である。
肝がんで亡くなる人は毎年3万人を超える。
「肝がんで亡くなる方は毎年3万人を超えています。その肝がんの原因の8割以上がC型肝炎ウイルスです。現在、このC型肝炎ウイルスの感染者は国内に300万人~370万人もいるといわれています。
インターフェロンと抗ウイルス薬の併用療法が開発され、有効率はかなり向上しましたが、副作用が激しくて治療が続けられなかったり、効果が上がらないケースもまだまだ少なくありません」とは、生薬による「肝庇護療法」を中心に、肝臓病と生活習慣の関係を研究している新中医学研究所所長で薬学博士の野村正和氏。
現状では、C型肝炎を完全に治せる治療法が見つかっていない。
このC型肝炎ウイルスが見つかったのは1980年代のこと。30年以上経った今も、完全に治せる治療法が見つかっていないのが現状なのだ。
肝庇護薬だけでは、完全に炎症を鎮めるまでに至らない。
「副作用がひどくてインターフェロンの治療ができない患者さんには、肝炎の鎮静化を目的とした『肝庇護療法』が施されています。しかし、今の肝庇護薬だけでは、完全に炎症を鎮めるまでに至らないのが実情。注射剤もありますが、長期間連日のように静脈注射をしなければならないので、患者さんの日常生活での負担が重く、吐き気や下痢、むくみなどの副作用も報告されています。
「肝炎患者の会」などでも広く活用。
抗酸化力を発揮する「垂盆草(すいぼんそう)」!
こうした中、『肝炎患者の会』などでも広く活用されているのが垂盆草。国内では食品に分類されている植物である。「垂盆草は、中国で権威のある薬草辞典にも記されている食用野草で、サルメントシンと呼ばれる成分が含まれています。
このサルメントシンは、肝臓だけに集中して強い抗酸化力を発揮することが知られていて、肝臓から血中に放出される酵素の量を抑える働きをすることが解明されています。つまり、炎症の鎮静化を助け、生活の質を向上させることに役立つと考えられています」
近著で、最新情報を紹介
垂盆草を含めた肝臓病対策についての新情報は、野村博士の近著『肝機能は食で改善できる』(幻冬舎発売)に詳しく紹介されているので、深く知りたい方は、一読してみてはどうだろう。
極端なダイエットは、たんぱく質不足を招く恐れが。
急増している非アルコール性脂肪肝炎。
一方、急増している脂肪肝炎は、アルコールの過剰摂取によるものではなく、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれる、動物性脂肪の摂り過ぎによって肝臓の細胞に大量の脂肪が溜まることで引き起こされる肝炎である。対策としては、肥満を解消するのは大事なこと。だが、だからといって、極端なダイエットをすると、ますます脂肪肝を悪化させてしまう恐れがあるという。
「極端なダイエットは、『たんぱく質不足』を招いてしまうからです。肝細胞の中にある中性脂肪は、たんぱく質と結びついて血液中に送り出され、体の隅々に運ばれてエネルギーになったり、細胞の原料として使われています。ところが、たんぱく質が足りなくなると結びつく相手がいなくなり、中性脂肪は肝臓から出て行けなくなって、どんどん溜まってしまうのです」
垂盆草のサルメントシンは、NASHの炎症を鎮めるのにも役立つ。
このNASHも一部のタイプは肝硬変、肝がんへと進行することが近年になって分かってきた。垂盆草のサルメントシンは、NASHの炎症を鎮めるのにも役立つそうだ。楽しく、よりよい人生をおくるためには、あの手この手の「体のトラブル対策法」を知っておくことが必要なのではないだろうか。
※週刊新潮に掲載