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垂盆草の薬理研究

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草の薬理研究

  • 肝臓保護、酵素低下作用

動物実験により垂盆草には肝臓保護作用があり、酵素抑制成分が垂盆草生薬及び乾燥させた全草の水溶部分に存在していることが証明された。垂盆草希釈アルコール抽出物及びサルメントシン(Sarmentosine)は血清中のALT(GPT)を迅速に降下させ、肝臓の糖代謝及びエネルギー代謝に関して促進作用があった。また、マウス及びラットの肝臓脂質の過酸化損傷に対抗することで肝細胞を保護する。 病理学観察において垂盆草を使用して6週間以上治療を継続したところ、肝細胞炎症性腫瘍が消失しており、門脈域炎症性細胞浸潤も消失し、壊死も明らかに減少していた。このことからサルメントシンの酵素降下作用は主に肝細胞損傷を減少させることにより得られるものであるということが証明された。

垂盆草による脂肪肝治療

現代中国の垂盆草の脂肪肝臨床研究

垂盆草による脂肪肝治療

中国で発表された垂盆草脂肪肝臨床資料によれば、40日間(6週間)~120日間にわたって脂肪肝患者計142例に、垂盆草で合成された漢方中薬を与えたところ、肝機能の数値、中性脂肪が明らかに改善された結果がでた。その内、臨床期間中に低脂肪食の摂取や禁酒をさせたグループの、総合有効率は90.5%にまで達した。脂肪肝は放っておくと、肝炎や肝硬変へと悪化する恐れがある。脂肪肝の最適な治療法は食生活の改善、運動を行って病因を排除した上で、肝臓の代謝や肝機能改善に優れた垂盆草を服用すれば、脂肪肝を早期に回復できると考えられる。

垂盆草による脂肪肝の効果的治療法

  1. 食習慣の改善と運動(脂肪肝の原因の排除)
  2. 垂盆草による肝機能の数値、自覚症状の改善
  3. 脂肪肝の治療、脂肪肝の重症化予防【肝炎、肝臓の繊維化、肝硬変予防】

血中ALT(GPT)値の改善

西洋医学と漢方医学が両立している中国では、1970年代から国家的政策により、垂盆草を最高水準の大学や研究機関で研究、本格的に臨床使用が行われてきています。

おもな研究機関では、上海第二軍医大学付属長海病院や山東大学医学院薬理学研究所等があり、多くの医学者や研究家たちの長年の苦労と努力により、様々な成果が実証されてきています。現在でも中国では「ALT(GPT)低下薬」と呼ばれ、最もよく利用されている肝炎治療薬の一つです。

【主な効能、効果】

  1. 【患者の70%が改善】
    1~3か月間使用すれば、約70%の患者のALT(GPT)値が改善。各種の肝炎を改善する効果に優れ、自覚症状も速やかに改善します。
  2. 【新しいタイプの肝庇護薬】
    肝炎の最も重要な指標とされる「血中ALT値」を低下させることにより肝炎を改善する、これまで日本になかったタイプの肝保護薬です。従来の治療法である注射や経口剤だけを組み合わせても、ALT(GPT)値が正常化されるのは3割程度に過ぎません。垂盆草の場合、1~3か月間使用すれば、約70%の患者のALT(GPT)値が改善され、継続使用すればその他の肝機能数値も改善して肝炎を沈静化します。
  3. 【副作用がない】
    従来の治療では長期間連日のように静脈注射しなければならなかったりと、経済面や精神面での負担が重くなりがちですが、垂盆草は経口使用でき、天然の薬草であるため副作用がなく、患者の治療負担を軽減することができます。

慢性肝炎治療薬の総有効率の比較

慢性肝炎に対する治療薬で有名なのはインターフェロン、インターフェロンとリバビリン(C型肝炎向け製剤)の併用、強力ミノファーゲンなどがあります。しかしこれらの治療薬は良く効くとは言えず、3か月間投与しても総有効率は60%以内にとどまっています。しかも、いずれの治療薬にも投与後、副作用の懸念があります。

慢性肝炎治療薬の総有効率の比較

慢性肝炎治療薬の総有効率の比較

垂盆草の総有効率は3か月間で70%以上の患者のALT(GPT)を低下させ、短期間の肝機能改善に非常に優れています。また垂盆草は天然の植物で、副作用の心配もなく、既存の治療薬と併用すればより良い効果を得やすいとされています。国内で用いられている治療薬の有効率が60%までしかない現状を考慮すれば、血中ALT(GPT)値が異常高値のままで治療を続けるよりも、ALT(GPT)低下に優れた垂盆草を併用した方が優れた予後が期待との判断も可能になります。

クルクミン

クルクミンとは、ウコンの根茎中に含まれている天然の黄色色素のことです。クルクミンが肝機能の改善になぜ効果があるのかということは、次に述べるメカニズムによるものです。

ま ず、クルクミンには胆汁の分泌を促進する作用があることが知られています。胆汁は肝臓で作られた後、いったん胆のうにたまり、十二指腸内に排泄されて栄養 素の吸収を助ける働きをしています。つまり、胆汁の分泌が促されるということは、肝臓の細胞が活発に働いて、肝機能が高まっているということになるので す。

クルクミンには肝機能の改善に効果があるばかりでなく、抗酸化作用があることも最近の研究で判ってきました。呼吸により体内に取り込ま れた酸素の一部は、フリーラジカルといわれる活性の高い酸素になって体細胞の膜や遺伝子などを傷つけ、その細胞が老化したりガン化する原因になることが知 られています。つまり抗酸化作用とは、老化や慢性疾患の引き金となるフリーラジカルや生体内の有害な過酸化脂質を分解してくれる働きのことです。

こ の抗酸化作用を持つ物質で他に知られているものには、トコフェロール(ビタミンE)やアスコルビン酸(ビタミンC)、β-カロチン(ビタミンA)などがあ りますが、クルクミンにはトコフェロールにも勝る強い抗酸化作用があり、細胞の老化防止に効果のあることが学会等で報告されています。さらに、クルクミン は融点が183℃と高いため、熱にも安定です。また、WHO(世界保健機関)においてその安全性が確認されています。

クルミンの持つ抗酸化作用によりシミ、ソバカス、老斑が消えたなどの改善報告例が数多く寄せられているそうです。中国から渡来し、琉球特産の薬草として大々的に栽培された春ウ コンは、古くから利胆薬、健胃薬、通経薬として広く用いられてきました。近年、薬理学的研究から、黄色い色素であるクルクミンや精油成分(フラボノイド、 カンファー、アズノン、シネオールなど)にその薬効が認められ、肝臓の解毒機能促進、胆汁分泌促進、胆道結石除去、利尿、強心、抗損瘍、血中コレステロール低下作用などが明らかにされています。肝炎、胆道炎、黄痘等に効果を発揮すると言われていますが、近年、慢性C型肝炎を含む肝臓病に対する効能に期待が寄せられています。

C型肝硬変におけるALT(GPT)の年平均値の推移と肝発がんとの関係

(※ここでは、ALT(GPT)値と肝硬変以降の一般的な関連性について取り上げています。)

神奈川県立がんセンターの多羅尾氏らは、C型肝硬変症例では肝細胞増殖能と肝発がんの間には密接な関連があることを明らかにしています。そこで、肝細胞増殖能の異常亢進は炎症に伴う肝細胞の壊死再生に基づいて起こるので、血清ALT(GPT)の1年間の平均値の推移と肝がんの関係を調べました。

ALTを抑えると発がん率が下がる

肝生検で肝硬変と診断され、5年経過観察した症例

肝生検で肝硬変と診断され5年間以上経過観察した55例における肝発がん状況を調べ、ALT(GPT)年平均値が80[IU/L]未満にコントロールできた症例では25例中2例(8%・年率1.6%)に、80[IU/L]以上が持続した症例では27例中12例(44.4%・年率9%)に発がんを認め、両群間で危険率1%(p<0.01)で有意差を認めています。C型肝硬変での年間肝がん発生率が年率5~8%であることを考えると、年平均ALT(GPT)が80[IU/L]以上を持続する症例は肝がんの超危険群に相当し、逆に80[IU/L]未満を維持できる症例は肝がんの危険率は明らかに少ない群と言えるでしょう。

年平均ALT(GPT)80[IU/L]未満を維持できた症例群の5年間の治療としては、無投与7例、強力ミノファーゲン小柴胡湯などの単独投与7例、強力ミノファーゲンとウルソ、小柴胡湯とウルソ、強力ミノファーゲンと小柴胡湯とウルソなどの多剤併用9例でした。

以上の成績は、ALT(GPT)が高いC型肝硬変でも肝臓用剤を単独ないしは複数併用の肝庇護療法によりALT(GPT)を持続的に80[IU/L]以下に抑えて、肝がん発生を抑制できる症例が少なからず存在することを証明しているのです。C型肝硬変のみならずインターフェロンの効きにくい難治性のC型慢性肝炎に対しても長期にわたる肝庇護療法によって、肝硬変への進展抑制のみでなく肝がんの発生を抑制するような効果も期待できることを示唆していることが分かります。

肝庇護療法

C型慢性肝炎インターフェロン治療後の長期予後より、炎症の持続と線維の増加に伴う病期の進展を阻止することが、発がんを抑制する上で大切なことが明らかになってきました。 Read more »

田七人参

田七人参

田七人参

田七人参は、中国では古来より「肝臓や心臓の守り神」として、王侯貴族の間で薬善料理等で食されていたウコギ科の植物です。三七人参、三七、田七等とも呼ばれ、古くから「金不換」(金では買えないもの)といわれるほど、数多い生薬の中でも最高級の秘薬とされてきました。現在でも田七人参が生薬として多く用いられており、薬善料理のスパイスとして日常的に食されています。 Read more »

小柴胡湯

小柴胡湯(しょうさいことう)は、多年生草木のミシマサイコの根である柴胡やグリチルリチンを含む甘草など7種類の生薬の混合物からの抽出物で、生物活性物質である各種サポニンを含む和漢薬です。 Read more »

ウルソ

熊の胆

熊の胆

ウルソ(ウルソデオキシコール酸、UDCA)は、ヒト胆汁酸の一成分で和漢薬として古くから知られている熊の胆(右写真)の主成分で、内服投与する医薬品です。利胆作用の他に肝血流増加作用や肝細胞保護作用があると言われています。

1976年に帝京大学第1内科の山中氏らはウルソの慢性肝炎に対する治療効果を二重盲検法により検討し、ウルソがALT(GPT)を有意に(p<0.05)低下させることを明らかにしました。現在では、自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性肝硬変や原発性胆管硬化症でもその有用性が確認され、種々の免疫調整作用も明らかにされています。千葉大学第1内科、東京大学消化器内科のグループでは、C型慢性肝炎にウルソを16週間連日投与して肝機能検査や胆汁酸代謝への効果を調べて、ウルソ投与群では対照群に比べて明らかにALT(GPT)、γ-GTPを低下改善させ、その作用機序として細胞傷害性の強いケノデオキシコール酸と細胞傷害性のないウルソが入れ替わることを明らかにしました。

ウルソ錠

ウルソ錠

ウルソの単独投与による肝発がん抑制についての報告はまだありませんが、強力ミノファーゲンなどとの多剤併用によるC型肝硬変での発がん抑制に効果があることは「C型肝硬変におけるALT(GPT)の年平均値の推移と肝発がんとの関係」の検証を通じて明らかになっています。ウルソ長期間投与でも殆ど副作用はなく、慢性肝炎や肝硬変の炎症の軽度の例では単独投与で、炎症の強い症例では強力ミノファーゲンなどとの多剤併用により、ALT(GPT)値の持続的な改善率を高める効果が期待され、長期的には肝がんの発生抑制につながるものと考えられています。